それから少し経ったけれど拓生くんから声がかかりそうになかったので、そろそろ声をかけようかなと思ったとき。


「……結菜ちゃん」


 拓生くんの方から声がかかった。

 拓生くんから声がかかって、私は時計台に向けていた視線を拓生くんの方に戻した。


「たぶんね」


 突然、拓生くんは、そう言った。
 そのあと。


「結菜ちゃんがオレに話したいことって、オレが結菜ちゃんに話そうとしていることと同じじゃないかな」


 そう言った拓生くん。

 そう言った拓生くんの表情は、少し寂しげに見えた。


 拓生くん……。
 拓生くんが話そうとしていることって、やっぱり……。