「結菜ちゃん」


 ……‼


 一輝くんは、一輝くんの呼びかけに下を向いたまま返事をすることができずにいる私の正面に立った。

 一輝くんが私の正面に立って驚いた私は、その反動で顔を上げてしまった。

 顔を上げた瞬間、私の目に飛び込んできたのは、やさしい表情の一輝くん。
 私を包み込んでくれるような、一輝くんの優しさが伝わる表情。

 私は、そんな一輝くんの表情から目が離せなかった。

 一輝くんも、やさしく私のことを見つめている。


 ……今。
 この瞬間。
 私と一輝くんのいるこの空間だけ時が止まっているような、そんな感覚になっている。
 その間、私と一輝くんは、じっと見つめ合っていた。