またドアをノックする音がした。


『結菜ちゃん、ちょっと入ってもいい?』


 一輝くんがそう訊いた。

 一輝くんどうしたんだろう……先にお風呂に入っていいよって言ったつもりだったんだけど……。


 私は、そう思いながら「いいよ」と返事をした。


 そして一輝くんは、私の部屋のドアを開けた。


「ごめんね、結菜ちゃん。いきなり『入ってもいい?』なんて言って」


 一輝くんは少しだけ申し訳なさそうにそう言った。


「いいよ。初めてだよね、私の部屋に入るの」


「そうだね」


 一輝くんと一緒に暮らし始めて一週間が経ったけど、一輝くんはまだ私の部屋に一度も入ったことはない。