「……一輝くん……」
「なぁに、結菜ちゃん」
「ありがとう」
私は一輝くんの言葉がとても嬉しい。
そして、そんな言葉を言ってもらった私は、とても幸せです。
「別に僕、結菜ちゃんからお礼を言われるようなことしてないよ」
いつも優しい一輝くん。
「そんなことない。本当に本当にありがとうだよ」
「よくわからないけど、結菜ちゃんにそう言ってもらえて嬉しいよ」
本当に本当に嬉しくて幸せで……。
本当に本当にありがとうで……。
そして……。
本当に本当に大好きだよ、一輝くん。
私はそう思いながら一輝くんと一緒に眠りについた。
報告
一輝くんと恋人同士になった土曜日、そして日曜日の二連休が明けた月曜日。
今は昼の休憩時間。
私は、いつものように彩月と弁当を食べている。
…………。
私は弁当を食べながら彩月の方を見た。
そして、こんなことを思っていた。
彩月に言わなければ。
私と一輝くんのことを。
でも、さすがにここでは言えない。
だから。
「……ねぇ、彩月」
「なぁに、結菜」
「近いうちに空いてる日ってある?」
「あるよ」
「部屋に来てほしいの」
彩月に、私と一輝くんが住んでいるマンションに来てもらおうと思った。
「部屋って、結菜と一輝が住んでるマンションに?」
「うん、話したいことがあるから」
「えっ、なになに結菜、話したいことって?」
私が彩月に話したいことがあると言ったら、彩月は興味津々になっていた。
「うん、そのときに話すね」
「えっ、なになに重大発表?」
彩月は身を乗り出すように訊いた。
「そんなに構えなくても大丈夫だよ」
ただでさえ彩月に一輝くんとのことを報告するのに緊張してしまうのに、あんまり彩月に構えられると、もっと緊張してしまうから。
「そうなの?」
「うん、気楽な気持ちで聞いてもらえばいいから」
というか、ぜひそうして、彩月。
「そうなんだ。じゃあ、楽しみにしておこう」
そう言った彩月は、わくわくしている様子だった。
正直なところ、あまり楽しみにされても困る。
なので。
「別に楽しみにしなくていいから」
私は彩月にそう言った。
「そうなの~? でも結菜から改めて話したいことがあると言われたら楽しみにもなるよ」
まだわくわくしている様子の彩月。
「ほんとにそんな楽しみにしなくてもいいから」
私は念を押すように、もう一度、彩月に同じことを言った。
「ふ~ん」
彩月はそう言って、再び弁当を食べ始めた。
私もそのまま、また弁当を食べ始めた。
弁当を食べ終えてから、彩月がいつ、私と一輝くんが住んでいるマンションに来られそうか話をした。
その結果、今週の土曜日に来てくれることが決まった。
土曜日。
私と一輝くんのことを彩月に報告する日がきた。
朝ごはんを食べ終えて、昼に彩月が来るのに備える。
「ねぇ、結菜ちゃん。僕、その場にいなくちゃいけない? 結菜ちゃん一人で姉ちゃんに話しておいてくれればいいよ」
一輝くんは、私と一輝くんのことを彩月に報告する場に一緒に参加することを少し面倒くさそうにしている。
「ダメ。ちゃんと一輝くんも一緒にいて」
私はビシッと一輝くんに言ったつもりだったのだけど……。
「……じゃあ……」
……?
「じゃあ?」
「夜、一緒にお風呂に入ろ」
……‼
「えっ⁉」
なっ……なななっ、なんとっ⁉