「僕の顔に何かついてる?」
……‼
し……しまった……‼
つい一輝くんの顔をジッと見てしまった。
「……あ……えっと……一輝くん、すごく背が伸びたなって思って」
「うん、なんかここ二年の間にニョキニョキって伸びたみたいで」
「あはは、ニョキニョキって……」
「だからかな、そのとき、よく節々が痛くなって」
「急に背が伸びると痛くなるよ」
「よく急に背が伸びた人がそういうふうに言っているのを聞いたことあったけど、まさか本当に痛くなるとは」
「そうだよね」
……あっ……。
そういえば、昼ごはんを食べようと思っていたのをすっかり忘れていた。
そう思ったときに突然玄関のドアの鍵を開ける音がしてそれから……。
そのあと、いろいろとパニックになっていたからお腹が空いていることも忘れていたけれど、ほっとしたからか、急にお腹が空いてきた。
そうだ、肉じゃが結構残ってるし、一輝くんも一緒に……。
「一輝くん」
「なぁに、結菜ちゃん」
「お腹が空いてない? もしよかったら昨日の夕飯の残りの肉じゃががあるんだけど、一緒に食べない?」
「うん、食べたい」
「じゃあ、待っててね。今、用意するから」
「何か手伝うよ」
「いいよ、気にしないで。こっちに移動してくるのに疲れたでしょ」
「大丈夫だよ」
「でも……」
「遠慮してるのは結菜ちゃんの方じゃない? 僕たち今日から一緒に暮らすんだよ。遠慮なんかしないで」
「一輝くん……」
「それに僕が結菜ちゃんと一緒に昼ごはんの準備がしたいの。いいでしょ?」
一輝くんは、やさしくそう言った。
「ありがとう、一輝くん。じゃあ、テーブルにお皿を出しておいてもらってもいい?」
「うん、わかった」
どんなに見た目のイメージは変わっても、一輝くんの優しさは変わらない。
一輝くんは昔から優しい。
私が落ち込んだり悲しんでいたりしていると、一輝くんは必ず私のことを励ましてくれたり、ときには黙ってそばにいてくれたりしてくれた。
いつもは彩月の後ろに隠れているおとなしい子が、いざというときは、とても頼もしい男の子になっていた。
気付いたら、私が困っていたり辛い思いをしているときには、いつも一輝くんがいてくれた。
私より二つ年下の一輝くんが、そのときはとても頼りになるお兄さんのような存在になっている。
私は、そのときの一輝くんにいつも甘えてしまっている。
そして私は、そんな一輝くんにいつも助けられている。
「結菜ちゃん、お皿出したよ」
「ありがとう、一輝くん」
昼ごはんの準備が済んで、私と一輝くんは昼ごはんを食べ始めた。
「結菜ちゃん、この肉じゃがすごく美味しい」
「ありがとう」
「いくらでも入っちゃう」
「おかわりあるよ」
「やったぁ」
とても美味しそうに肉じゃがを食べている、一輝くん。
一輝くんは食べているときの顔も完璧だな。
……って、なにを私は、そんなにも一輝くんの顔をジッと見ているの……‼
「結菜ちゃん、どうしたの?」
し……しまった、一輝くんに気付かれてしまった。
「う……ううん、何でもないよ」
慌てて言う、私。
私の様子を一輝くんは『そうなの?』というような表情で見ていた。
私は、まだ少し動揺が残っていた。
……でも……。
きっと大丈夫。
一週間前に彩月から一輝くんと二人で暮らすことになると聞かされたときには、どうなることかと思ったけれど、なんとかなりそう。
このまま平穏に一輝くんと二人で一年間一緒に暮らすことができそうな気がする。
そう思いながら、一輝くんと穏やかに昼ごはんを食べていた。
危険(?)な夜
一輝くんと二人で暮らすようになって一週間が経った。
今のところ何も問題がなく穏やかに過ごせている。
今は夕飯を食べ終えて、一輝くんと一緒にソファーに座ってテレビを見た後、私と一輝くんは、それぞれの部屋に入っていったところ。
部屋に入った私は、椅子に座ってスマホを見ていた。
それから少し経ってドアをノックする音がした。
『結菜ちゃん、お風呂沸いたよ』
ドア越しから一輝くんの声。
「一輝くん、お先にどうぞ」
いつものように一輝くんにそう言う、私。
『いつも僕が先でいいの?』
遠慮気味に言う、一輝くん。
「うん、いいよ」
いつものようにそう返事をする、私。
私は、お風呂に入ると、わりとゆっくりになってしまうので、一輝くんに悪いと思い、いつも一輝くんに先にお風呂に入ってもらっている。
だから今日も、いつものように一輝くんに先にお風呂に入ってもらう。
一輝くんに先にお風呂に入ってもらって、私は再びスマホを見ていた。
すると……。