「……一輝くん……」
「なぁに、結菜ちゃん」
「あのね……なんで、さっきあんなこと言ったの?」
「あんなことって?」
「拓生くんが私にテスト勉強を一緒にしようと言っていた日って、特に一輝くんと用事があるわけではないよね。なのに、どうしてそんなことを言ったのかな……って……」
「…………」
一輝くん……?
どうして無言なの?
無言でいられたら、どうしていいのかわからないじゃない。
ねぇ、一輝くん。
私は、どうしたらいいの……?
「……一輝くん……?」
私は一輝くんの無言が耐えられなくて、もう一度、一輝くんの名前を呼んだ。
すると……。
「……結菜ちゃん……ほんと、なんにもわかってないんだね」
……?
「え……?」
『わかっていない』って、なにを……?
「なんで僕がそんな噓をついたのか」
……?
「一輝くん……?」
どういう意味……?
「……行かせたくなかったから」
「え……?」
「市条先輩のところに結菜ちゃんを行かせたくなかったから」
「一輝くん……」
「そんなこともわからないなんて結菜ちゃんって子は……」
一輝くん……。
「でも……」
「『でも』……なに?」
「拓生くんは友達なのに?」
「……はぁ⁉」
私の発言に一輝くんは呆れ顔。
「あのねぇ、そういう問題じゃないの。友達だろうがなんだろうが『男』だから嫌なの」
「えっ⁉」
「『えっ⁉』じゃないよ。本当に結菜ちゃんって子は~」
ますます呆れ顔になった一輝くん。
「それに……」
「それに……?」
「特に市条先輩はダメ」
……?
「どうして特に拓生くんはダメなの?」
「どうしてって……だって、たぶん市条先輩は結菜ちゃんのことを……」
「え?」
「……なんでもない」
一輝くん……?
…………。
……‼
もしかして……っ。
一輝くんは気付いている……?
拓生くんが私のことをどう想っているのかを……。
でも……。
私は一輝くんにそれ以上、訊くことができなかった。
ちょっぴりウソつきな男友達くん
テストも無事に終わった数日後の、ある日の昼休み。
いつものように彩月とお弁当を食べていた。
すると……。
「結菜ちゃん」
教室のドアの方から私の名前を呼ぶ声が。
この声は……。
私は声が聞こえた教室の戸の方を見た。
そこには……。
拓生くん……。
私は彩月に一言声をかけてから、拓生くんがいる教室の戸の方へ向かった。
拓生くんとは、あの日、一輝くんも一緒に三人でカフェでお茶をした以来、会話はしていない。
学校ですれ違ったときに挨拶をするくらいだった。
だから拓生くんと話すのは、ちょっと久しぶりになるのかな。
そう思いながら、教室の戸のところにいる拓生くんのところに。
「拓生くん」
「結菜ちゃん、ごめんね、急に」
「ううん、大丈夫だよ」