「一輝くんはダメなんかじゃないよ」
私が軽率なところがあったから。
一輝くんに気持ちを打ち明けられて、一輝くんの気持ちを知っているのに……。
いくら高校一年生の頃からの友達だからといって、拓生くんと二人で会って、おまけに家にまで……。
たぶん一輝くんは、私が拓生くんの家に入っていったところは見ていないかもしれないけれど、そういう問題ではない。
私は一輝くんに、まだ自分の気持ちの答えを出していないのに、他の男の子と会ってはいけなかった。
私は一輝くんに失礼なことをしてしまった。
……‼
そうだ。
私は結果的に、もう一つ失礼なことをしてしまうことになってしまった。
拓生くん……。
私は拓生くんに気持ちを打ち明けられた。
私は、これから拓生くんにも、どのように接すればいいのか……。
……どうしよう……。
拓生くんに気持ちを打ち明けられたことは一輝くんには絶対に言えないし、バレてはいけない。
もし一輝くんにバレたら……。
いろいろ考えていたら、私は一輝くんと拓生くんに申し訳ない気持ちになった。
「ごめんね、一輝くん」
私は自然に一輝くんに謝っていた。
「なんで結菜ちゃんが謝るの?」
「私も悪いところがあったから」
「そんなことないよ、結菜ちゃんは全然悪くない」
一輝くん……。
本当に優しいな、一輝くんは。
「だけど私は一輝くんのことを不安にさせてしまった。だから……」
私は一輝くんに不安な気持ちになってほしくないし、悲しい気持ちにもなってほしくない。
一輝くんには、いつも笑顔でいてほしいから……。
「ありがとう、結菜ちゃん」
一輝くん……。
一輝くんはそう言って、私の頬に伝う涙を指で拭ってくれた。
そして、そのあと一輝くんの唇が私の唇に重なった。
今度は、さっきのように激しくて荒いキスではなく、心のこもった一輝くんのやさしさを感じるキス……。
……心地良い……。
一輝くんのやさしいキス……。
とろけるような甘いキス。
私は一輝くんのそんな甘いキスに溺れていた……。
会っちゃった‼
ある日の休日。
今日は彩月と遊びに行っていた。
そして彩月と別れた帰り道。
私は家に帰る前に、ちょっとコンビニに寄って行こうと思った。
そう思った私はコンビニへ向かっていた。
そのとき……。
「結菜ちゃん‼」
私の名前を呼ぶ声がした。
この声は……。
私は声がする方を見た。
「拓生くん」
そこには拓生くんがいた。
「嬉しいな、結菜ちゃんに会えるなんて」
とても笑顔の拓生くん。
「すごい偶然だね」
私も笑顔で言ったけれど、その笑顔は少しだけぎこちない。
なぜなら……。
拓生くんに想いを打ち明けられてから、こうして拓生くんとしっかり言葉を交わすのは初めてだったから。
最近、学校であまり会う機会がなく、たまにすれ違ったときに挨拶をする程度だった。
「結菜ちゃんも出かけてたんだね」
「うん、友達と遊びに行ってたの」
「そうなんだ。オレも友達と遊びに行ってたんだ。本当は、もう少し遊ぶ予定だったんだけど、友達に用事があるらしくて」
「そうなんだ」
とりあえず、なんとか会話はできている。
拓生くんに想いを打ち明けられてから、私の中で少し気まずさがあったから。
「そうだ、結菜ちゃん、このあと時間ある?」
「え……?」
「せっかくこうして会えたことだし、今からカフェでお茶でもしない?」
え……‼
カフェでお茶……。
拓生くんと二人で……。
それは……。
どうしよう……。
「結菜ちゃん?」
私は、なかなか返答することができなかった。
拓生くんと二人でお茶……。
私は、正直なところ少し困っていた。
なぜなら今、私は、ある人物のことが頭に浮かんでいるから。