ヒルズビレッジにある
オフィスタワーの
上層階VIPラウンジは、
思った通りに、
ハイクオリティで、
オーセンティックなインテリア
空間だ。

ここは、オフィススペースの
幹部や社長同士が異業種交流
にも使っているとかで、

クリスタルガラスで
ゾーニングした、
ミーティングテーブルも
ある。

もしかすると、
この天井のって!
いかにもな
某クリスタルガラスの
シャンデリアじゃん!

シオンは、ポカンと
口を開けたままで、
照明を眺めてる。

まだ時間も早めなせいか、
『武々1B』ギャラリーのメンバー
貸し切り状態。

セットアップも
大方終わり
ハジメに連れられ
ギャラリーメンバーは
ラウンジにいる。

「そーですね↑↑。ちょーど、
オフィスビューにある
ルーフトップガーデン
ですけど。
『名うて』?のガーデナー作庭
とかでですね、
ナショナルVIPをゲストに、
『お茶会』も
オープンされてますね↑↑。」

いち早く、ヒルズビレッジに
入り情報収集していた
ケイトウとダレンが、
ハジメとヨミに レポート中だ。


「 意外、『見合い』活用も多く
レジデンス住人
オフィスの企業関係、
テナント名店の御曹司、
老舗の若旦那衆も
頻繁に
庭園施設は 活用されています」

ダレンの言葉に オーナーである
ハジメは、顎に片手を
当てながら 頷いた。

「ハジメオーナー。今回は、
オフィスを置くファシリティに
かなり特化したアート展開を
考えておられると 言うことで、
宜しいでしょうか?」

ヨミは、並んだ惑星のような
眼鏡のツルを
いつもの様に押し上げてる。

そんなヨミに ハジメは、

「ヨミくんのさぁ、
鼈甲のフレーム?その上のぉ
ツーブリッジに まるで~
星みたいに添えてるのん、
淡水パールぅ~?」

横槍を入れて楽しんでいる。

「ハジメオーナーっ!
ヨミ先輩のツーブリッジグラス
は勝負眼鏡ですからっー!」

シオンが、ふざけるハジメを
あわてて 小突くと

ええ~、ヨミくん
玉の輿ねらい~と叫ぶ
ハジメ。

全員が、無言白い目線で
咎める。

「オーナー。
オフィスの新展開に、私も
気合いが入っていると
言ってもらいたのですが!!」

ごめん~ごめん~。
ハジメの ヒラヒラと謝る声が、
ラウンジに響く。

「このオフィスはねぇ、他の
オフィスと違ってぇ このさ、
セレブリティなヒルズコンセプト
に押し上げられて~、生活圏も
含め、限りなくぅ
エコノミックゾーンに近い
アートビジネスを 展開するよう
なるんだよねん。OK~?」

早い時間の為
ラウンジにサーブされているのは
アフタヌーンスイーツ。

ハジメ達のテーブルには
ブランドのテーブルウエアに

コーヒーや、ティー、
プティガトーが
並んでる。

「『ステイルーム』の流れでー
リモートコミュニケーションが
主になるなら、インテリアアート
も多くなりますしーって
事ですか?ハジメオーナー?」

シオンは、
まるでハイジュエリーのような
プティガトーを

白い指から紡ぐカトラリーに
ぶっ指して、
クルクル 揺らす。

「シオンくん、君ねぇ。ま、
いっ けど、、、
今回の自粛スタイル~、
全然さぁ、ほんと想定外だよぉ。
で、
転居したのはぁ、顧客が30代
ラインのぉ 若返り
エグゼクティブになるって
兆候からなんだよねん。 」

うん、
コーヒーも良いやつだよん。と、
ハジメは ご機嫌で
カップを傾けた。

「オゥレディ↑↑!
インテリア&コレクション
アートへのシフトですね↑↑」

シオンの口に、
ケイトウが スイーツを あーん
させながら、ハジメに
続ける。


ケイトゥくんはぁ、シオンくんを
好き過ぎだよねん~と、

ハジメは、苦笑して
ソーサーにカップを
下ろした。

「もとの画廊街での顧客はねぇ、
これからはぁ、相続転売の傾向
になるよねん~。うちは新参
だしぃ、業界の潮目が変わる
タイミングでの引っ越しだよん」

ヨミが、
ダレンに この後の予定、

打ち上げを兼ねて、
1つ下のフロア
レストランで
ディナー予約をしてるからと
聞いている。

「想定外の流れで、ハジメ
オーナーが思ってたー、
交流的アートセンターって
方向を 調整していくって
今後は なるんですかねっー?」

そんな事を
シオンが 事もなげに
言葉にして、
ケイトウは、意外そうに
眉毛を上げた。

それに気がついた
ハジメが、
自分の思考を、提示する。


「昔ならさぁ、宗教とか?
聖地をメインにね、経済や人の
流れをつくられたよ。
でもぉ、
今は それに変わる
何かとしてねぇ、公共的な
国の戦略で~ヨーロッパなんか
は、
アート・センターをつくって
結果を出してる。有効だよねぇ
従来なら、この国でもねぇ
インバウンドゲストは
歴史や芸術、景観を見て、
街に出て行く動線で計画
できたんだよ。
それがさぁ、そのベクトルを
今回はぁ、調整する事に
なるねってシオンくんは
さぁ、言いたいんだよね?」

ヨミと話がてら
聞こえていただろう、
ダレンが

「シオン姫は、よくオーナーの
未来的思考まで、推し量れる
ね?意外なシオン姫の一面だ」

ケイトウからのあーん攻撃を
終えた、シオンに
驚いたなと、
感嘆した。

いやいやっー、
ギャラリスト探偵なんて
変わりモノの思考を
アタシが 読めるかいっー。

「まあねぇ、
知りあって長いから~、
シオンくんも、ヨミくんもね」

シオンの変わりに、
ハジメが返事を 引き受ける。

シオンは、やや不服顔。

「シオーンと、オーナーは、
いつから『腐れ縁』ですか↑↑」

自分は、
今日2杯目の コーヒーを
手に持って、
ケイトウが
前のめりに ハジメに聞く。

シオンは、
青みがかった琥珀色の
ダージリンティーに
あえて、
ミルクを落として

ケイトウの言葉に、ふと
時間を遡って
しまった。

ハジメとの
始まりの時間軸。

それは、
決してキラキラとした
このラグジュアリーな空間に

全く縁の無い
人生の頁。

「あれからー、
何年たちました、、ですか?」

シオンの
小さな
その小さな
呟きが、
琥珀色の湯気に
くゆりと
シャンデリアに

昇る。