「 シオーン、今日も 変わらず
ジャパニーズ令嬢風が
ナイスに 可愛いいのね↑↑!!
ホントは 口をあけたら
残念ガールだけど。」

ケイトウは、ライトブラウンの
巻き髪を キャラキャラと
揺らして シオンに 御返しと
ばかりに
バンバンとシオンの背中を
叩きまくって モフモフハグする。

「やめてよねっ。令嬢も残念も
全然ウレシくないっー!」

シオンは、
只でさえ 身長の高い上に、
ハイヒールで モデルのような
長身の ケイトウに
埋もれるようにかわした
ハグを外して
下から ジトッと 睨む。

「 ご機嫌よう?シオン姫。
つい数分 前に、
ボスから連絡、もらった。
ヨミ女史と
こちらに向かってるらしいし、
まずは、一服如何?」

これまた、
見知った 長身の 中華系男子 が
後ろから 挨拶してきた。
で、今
『沼はまり』してるのだろう
茶の野点セットを 手に
シオンを迎えるのだ。

ダレンの『姫』を、敢えて
シオンは 指摘しない。

彼の、華系男子は
基本、女子は
『姫』呼びなんだから。


東日本オフィスは 関東ルーム兼で
見目麗しい、海外ハーフの
『ダレン』と『ケイトウ』2人が
スタッフとして在中してる。

「 ダレンは、毎日 目の前の
日本庭園を見てたら、茶道に
どっぷり はまった 口っー?」

こんな
シオンの 軽口を

まあ、そんなとこ、と、
ダレンは 切れ長の瞳1つで 流して
シオンを フロアの一角に
促す。

オフィス専用のフロア。
この 真ん中は
オフィスラウンジ的な
空間なのだろう。

リュクスな ソファーインテリアや
スタイリッシュな照明、
観葉植物も あったりして、
ノマドワーカー用?
ライティングデスクも
センスよく配置されて
見える。

それを
変則的な オープンシェルフが
魅力的に
演出しながら
フロアを いい感じに
区画ゾーニング
していて。

視線をダレンの歩みに
向けると、
その1つのコーナーに
黒塗りのテーブルと
卓上釜が 設えている
じゃないか!

「わ、立礼卓まで持ち込んでー。
これって勝手に ここのラウンジ
シェルフを 立礼棚に
見立ててるんでしょー?!」

これは、
もう 自分が 手伝いに来なくても
2人で 勝手気ままに
オフィスの 片付けも 終わらせてる
んじゃないの?

「あ!シオーン。まだまだ
私たちの片付け、エンドレス。
シオンのヘルプはとっても
大事なんだからね!」

ケイトウが シオンの顔から
読んだの だろう。
慌てて、言い訳して
ダレンに 助けを求める。

ダレンが
立礼卓の 亭主席から、

「その通り。助太刀歓迎だ。」

どうぞ、シオン姫と
エスコートをしつつ ケイトウの
台詞を ゆるりとした笑顔で
肯定した。

シオンは わざと
仕方無し気にして、
やれやれと 席へ 付く。

立礼式茶道は、

明治、開催された
京都博覧会で、外国ゲストに
茶道を 振舞うため
確立されたのが 始まりの
椅子座の茶道。

ケイトウが
菓子を運んできたから、見ると
中には、あめ色の、、

「月餅!そっか、香港のお中元
月餅だもんねっ。いいの?」

そうは言いつつも
ちゃっかり、シオンは
隣のケイトウに
「お先に」と伝えて 器を
両手で持ちあげて、
頭を下げる。

月餅を食べる気持ち
満杯だ。

「ああ、本当は 仲秋に食すモノ
だが独断、 姫の持て成しに
差し上げようと 思ってね。」

わざわざ
香港から贈られたのを
オフィスに持ってきてくれた
ようだ。

すこぶる、うちの男性スタッフは
レディに優しい。

用意してくれてた 懐紙に
箸で 器に盛られた月餅を
1つ取って
シオンは ちまっと のせて
こっそり
男性スタッフの面々を
思い浮かべた。

「さんざしの月餅だから、
この季節にも良いしね。」

シオンの頭の中を
知るべくもなく、

ダレンは、
目の前で 「美味しいーっ」と
声を上げて 食べる
本部客人を 眺めて
茶の用意をする。

さんざし月餅の 酸っぱ甘い 香りと
薄茶の香りが
オフィスラウンジに
くゆり 流れた。

「このフロアって、他に
オフィスどれだけ入ってるの?」

シオンは
さっきと同じく
隣のケイトウに
「お先に」と伝えて、今度は
ダレンに
「お点前頂戴いたします」と
頭を下げる。

「5組のオフィスかな。
シェアできる
セミナールームと、ヒルズライ
ブラリーって オープン書斎も
このフロアに併設している
から、すぐ上のフロアより
オフィスは少ない 。」

器の正面から
器を2回まわし
シオンは
3口半で 薄茶を
飲みほした。

「このオフィスラウンジもだけど
タワー内で コミュニケーション
出来る空間が 多くてイージーね」

指できゅっと
器口をぬぐうシオンを
見ながら
応えた
ケイトウは オフィスラウンジの
奥にみえる 庭園風景を
大きく手で 示して。

「それに、ダントツ言っても、
このファンタスティックな
ロケーションよ!アガルね↑↑」

でしょ?と
ケイトウは シオンに
ドヤ顔をして、
何故か?自分は コーヒーを
口にした。

「え、なんでっ?お茶でしょ?」

見ると、
シオンの前で 亭主席に座す
ダレンの顔は
氷河期だ。

どうやら、地雷?!
シオンの予感を後押しする
言葉が、隣から発せられる。

「はあ?!ガッデームね↑↑!
シオーン。わたしが ダレンの
お手前、どれだけ付き合わされ
たか 分かる↑↑?!
クレイジーな ダレン'S茶道は
もうノーセンキューね!!」

ケイトウは、そう叫んで
これ見よがしに
カップのコーヒーを
腰に手をあてて、ゴクゴク
飲み干し

「けっこーなお手前で↑↑!!」

タン!!っと 立礼卓に
カップを戻した。

「・・・・」

あちゃー。
これは、ダメだわ。

シオンは、ダレンとケイトウの
顔を、何度か
見比べて
話を変える事にした。

「それにしてもさっ、
このヒルズビレッジ、凄いね」

ほら、タワーオフィス以外も

ホテル並みのサービスを誇る
総合病院に、
億単位のレジデンスでしょ?

ホームページみたけど、
プラットホームモールも
なんか、リュクスで伝統的な
テナントが入るみたいだしー。

とか、
矛先を ヒルズビレッジに
シオンは 振ってみた。
この後の片付け作業が
このままだと 難航しかねない。

シオンに乗ったのは、
意外にダレンだった。
いや?
流石、レディに優しいうちの
男性スタッフか。

ダレンは、
自分で 淹れた 薄茶を手にして

「 このヒルズビレッジは、
旧財閥家の所有と
聞き及んでいる。よくある、
公的庁や、地所企業で計画
されたヒルズ群とは
一線を画するんだろう。」

と、シオンに 答えると
月餅を 自棄になって食べ始めた。

こうなると、
作法もないねっー。

シオンは 菓子盛りから
もう1つ
小振りの 月餅を摘まんで、
口に入れる。

「だから!向かいの レジデンスは
このタワーのエグゼクティブ
とか、所有している 財閥の
プリンス達が
住んでるですってよ↑↑!」

ケイトウも、コーヒー請け?に
月餅を手を 伸ばしてきた。
よしよし。

「だからだねー、レジデンスの住人
基準だから 高級ホスピタリティ
病院とか、モールになるって事
だよねっ。セレブとかって、
それこそ芸能人御用達とか
なりそうじゃんっ!」

「イエース。お向かいの病院は
ハイソサエティな
ホスピタリティコースメニュー
がサーブされるって噂ですわ!」

ケイトウ、やけに詳しいよね?
どこネタ?

シオンの驚きに、
ケイトウは、

「噂好きのクリーンスタッフ
から 新鮮なネタは仕入れて、
ゴシップはバッチリね↑↑」

「そんな情報だけじゃないだろ、
ケイトウ。
トップクオリティの 外科チーム
がいるハイスタンダードな
総合医療機関なのだから。」

困るな、
これから顧客になり得る
ヒルズファシリティと心得ろよ。
と、ダレンがケイトウに
お小言すると
そんなダレンに ケイトウが

「ダレンは 貴方って ホント、
堅物ボクネンジンですね↑↑」

と、応戦して、
ギャーギャー言い合いになる。

結局、こーなるっ。
すいません、マジ
手に追えない ハーフ組だよー

って
シオンがとうとう
意識を遠くに 飛ばしかかった時

「やだなぁ~ん。せっかく
ぴっかぴか オフィスにぃ、
こぉして 引っ越したんだよん。
ダーレン&ケイトゥには 仲良く
してほしいんだけどねぇ~?」

声がして、
シオンは その声の主を
探す。

と、

ね?って、タレた目を
いつもの癖で ウインクさせた
武久一こと、ギャラリーオフィス
オーナーのハジメが

定番の 麻のスリーピース姿で、
オープンシェフの影から

ヨミと並んで 現れた。

救世主降臨。

シオンは
グッと両の手を 組んで

「オーナーっ!選手交代ですっ」
と、助けを呼んで、
目の前の月餅を 供物に
ハジメに 捧げて
ふざけた。