「そう、今度こそ運命の相手だと思うんだよね」
「そんなのなんでわかるの?」

 確信を得ているのか、力説する彼女につい、訊いてしまった。

「好きになるんだから、運命でしょ」
「……あ、そう、なんだ」

 あまりにあっさりとした答えに、これ以外の返事は浮かばなかった。

「でも、前は失敗したの?」

「前は、違ったみたい。前は私のことを好きじゃない人のことを好きになって、猛アタックしてつき合ったんだけど、それが悪かったのかなって。今度は、相手も私のこと好きっぽいから、たぶん大丈夫!」

 自分のことを好きじゃない人は、運命ではないらしい。

 そっか、そうなんだ。いや、わかんないけど。まあ一理あるような気がしないでもない。そういう考え方もあるのだろう。

 つまりそれは。

「両想い、なんだね」
「松本さんも、今好きな人いる?」
「え? あ、いや、どうかな」

 ここで〝いる〟と素直に答えられないのが、私だ。それが、私と澤本さんの違いなんだろう。素直にはほど遠い自分を再認識する。

 かちんかちんと、ひっかかりを覚えたものがパズルのピースになって合わさっていく。


 先輩は澤本さんの前でギターを弾かなかった。
 ふたりはとても仲がいい。
 澤本さんには好きな人がいる。


 そして、放課後に先輩から返ってきた交換日記を読んで確信した。



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   さすがに誰かはまだ教えられないけど
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   でもめちゃくちゃかわいい子だよ
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   素直で 一生懸命で 
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   隠しごとができないくらい馬鹿正直で
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   一緒にいると俺もウソがつけなくなるんだ
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 ――先輩の好きな人は、私じゃない。