――先輩の好きな人が本当に私だったら。

 考えるだけでかっと体全体が熱くなり、今度はノートで顔を隠す。

 先輩の好きな人が私だとするならば、先輩は私に告白するということだ。

 でも、まだ確定ではない。今までその勘をはずしたことがないとはいえ、まだちゃんと確認したわけではないのだ。感情が先走って自分の気持ちを認めてしまったどころか、交換日記に書いてしまったけれど。
 勘違いだったらそれこそ恥ずか しすぎて死んでしまうかもしれない。

 いったん考えるのをやめよう。少なくとも、この交換日記の〝ななちゃん〟は先輩の好きな人を知らないのだ。もちろん、私――この場合〝ななちゃん〟――が好きな人が二ノ宮先輩だということも、ばれるわけにはいかない。

 あたりを見渡し高鳴る胸を抱えたまま返事を書く。余計な考えを捨て去り〝ななちゃん〟として。


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   告白なんてまだできないですよ!
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   自信がないので……
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   やっぱり告白するってすごいことですね
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   先輩みたいにいけるかもって思えないと
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   私にはできそうもないです
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 書いたあとに、そういえば……とページを遡った。

 ――『結構いけるんじゃねって思ってたり』

 たしかに、そう書いている。先輩は告白する人との関係をそう言っていた。その直後に『どうかなー』とも書いてあるけれど、この時点で先輩と先輩の好きな人はそれなりの関係だったようだ。

 私と先輩って、そんな関係だっただろうか。

 顔見知りで、見かけたら先輩は必ず声をかけてくれた。でも、今のような関係になったのはこの交換日記をはじめてからだ。少なくとも、それまでの私は先輩に対して特別な感情を抱いていなかった。

 ほかのページに書かれている内容も確認する。どうやら先輩は想い人に感謝をしているらしい。ひとりでいるのがさびしいときに出会った、というと、はじめてちゃんと会話をした一年半前のことだろうか。

 私、そんな感謝されるようなことしたっけ。家庭環境だって先日知ったばかりだ。

 それに、あのとき、救われたのは私のほうだ。