_______________________
_______________________
_______________________
   おお、とうとう! 
_______________________
   これでななちゃんも一人前だな
_______________________
_______________________
   次のステップは告白か
_______________________
   あ でも俺が先にするからな!
_______________________
   抜け駆けはしないように!
_______________________
_______________________
_______________________


 私に向けられた〝告白〟という単語に、

「無理無理無理無理」

 と、誰もいない靴箱で叫んだ。

 そんなのできるわけがない。そもそも、なんで私は前回のノートに余計なことを書き足してしまったのか。本人相手の交換日記だというのに。愚かにも浮かれていたとしか言いようがない。

「あーもう、もう、もう!」

 処理の方法がわからない感情を、言葉にして吐き出す。両手で紅潮しているだろう自分の顔を覆い、じっとしていられずその場で足踏みをした。

 落ち着け、落ち着くんだ私。

 心の中で十秒ゆっくり数えてから「よし」と口元を引き締め冷静さを取り戻す。けれど、すぐにへにゃへにゃと緩んでしまった。

 なんなのこれ。どうしていいのかわからない。自分の感情なのに、手に負えない。

 これが、恋なのか。

 先輩が好きだと、受け入れることができた昨日の放課後から、なにをしてても先輩のことを考えてしまい、浮かんでくる〝好き〟という言葉に心が弾む。弾みすぎて自分がどこにいるのか見失ってしまいそうになる。

 数日前から、薄々気づいていた。目をそらしてこの気持ちは存在しないものにしようとしていた。認めて、具現化してしまったらもう、なかったことにはできないから。失恋確定の想いなんて、存在しないほうがいい。

 とはいえ、言葉にするだけでこれほど気持ちが変わるとは。

 体内の細胞がひとつ残らず乗っ取られてしまったみたいだ。

 今度は壁に手をついて、項垂れる。まさか自分がこんなふうになってしまうとは。恋を舐めていた。耐えられない。けれど、幸福感のような充実感のような高揚感のような、名前のつけられないカラフルな感情が私の中を駆け巡っている。

 壁に体を預けて、ずるずるとしゃがみ込む。そして、再び交換日記を読んだ。

 抜け駆けなんてできるはずがない。

 私にはまだその勇気もないし、そもそも。そもそもだよ。