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ありがとうございます
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たしかに そうだったのかも
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これからは伝えるようにがんばります
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先輩は言葉の魔術師みたい
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そんな先輩の歌ならきっと 伝わりますよ
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今日は朝からどこにも不調はなかった。
昨晩、希美からメッセージで昨日私の鞄とコートが保健室にあった理由を教えてくれた。どうやら希美と優子が昼休みの終わりに念のためと持ってきてくれたらしい。そして、そこにはすでに先輩がいて、私の事情を伝えたと。先輩が強引だったのは、私の体調不良の原因も、関谷くんとの会話を聞かれていたことから察していたからかもしれない。
先輩は、想像以上に人の気持ちを感じ取ってくれる人なのだろう。
――私も、そんな先輩に少しでも近づけるだろうか。
朝から決心していたけれど、やっぱり本番の昼休みになると緊張がピークに達する。鼻から息を吸って、ゆっくり口から吐き出す。まだ少し弱腰になりそうな気持ちを、必死に奮い立たせて、そして、生徒会室のドアを見た。跳ねる心臓を落ち着かせるようにもう一度息を吐き出して背筋を伸ばし、ドアに手をかけて開ける。
中にいた関谷くんと佐々木さんの視線が私に集まる。
「松本?」
「な、なんで」
驚いた様子のふたりに「突然ごめんね」と言って足を踏み入れる。口から心臓がものすごい勢いで伸縮しながら飛び出てきそうだ。
「この前の話を、ちゃんとしないとって思って」
机の上に散らばっている資料に、やっぱり私を抜きにして仕事を進めるつもりだったのだとわかった。私はいらないんだという声が聞こえてきた気がして、目の奥がツンと痛む。
わかり合えないかもしれない。いまさらかもしれない。
でも、それを、正論のせいにして終わらせたくはない。
「言葉足らずで――」
「なんで来ちゃうんですか、江里乃先輩!」
私の言葉を遮って、佐々木さんが叫んだ。その口調は、責められているようでもあり、落ち込んでいるようにも聞こえる。「え」と言葉が途切れてしまった。
「完璧に仕事をできるようになって見返してやろうと思ったのに!」
見返す? 私を? 佐々木さんが? なんでそんな思考に?
「えっと……」
困惑する私に気づいた関谷くんが、困ったように眉を下げて笑った。
「佐々木さんと話したら、自分の頼まれていることの重要性がいまいちピンときてなかったみたいでさ。なにが重要で、それにはなにが必要か、とか」
関谷くんに言われて、それはたしかにそうかもしれない、と思った。もちろん都度説明はしていたものの、佐々木さんに私の作業を手伝ってもらうことはなかった。私がどういう流れで仕事をしているのかも知らないかもしれない。
私も去年佐々木さんと同じようなことをやっていたけれど、私の場合は先輩に聞いたりそばで見ていたり想像したりしていたと思う。それを、知らず知らずのうちに、私は佐々木さんに課していた。
私ができていること、できていたことは、彼女もできて当たり前だと思っていたのだ。できない理由を、考えることもしなかった。