かたいベッド少し動くだけでスプリングがうるさい音で悲鳴をあげる。ベッドがあまりに軋むので壊れやしないかと不安になった。けれど、暖房が効いているせいか、あっという間にまぶたが重くなり、まどろんでいく。

 ここに、二ノ宮先輩がいたらいいのにな。

 あの人に甘いお菓子をもらえたら、元気になれそうな気がする。

 先輩と一緒にいると、先輩に特別扱いされているような気がするから。もなんでも受け入れてくれそうな錯覚に陥るから。

 もちろん、そんなのは勘違いだとわかっている。

 先輩は誰にでもあんなふうに接するのに。

 それに、好きな人がいる。ちゃんと、特別な誰かが、先輩には存在する。


 そう思った瞬間、胸に小さな針が刺さってちくりと痛んだ。


 その痛みで、目が覚めた。

 視界が開けていくと、白い天井と蛍光灯が私を見下ろしていた。ほんの一瞬、目をつむっただけのような気がするけれど、やけに気分がすっきりしていて腹痛もなくなっている。もしかすると、深く眠っていたのかもしれない。

「おはよ」
「おはようございま……」

 横から声が聞こえてきて、まだ頭が覚めない状態で返事をする。その途中ではたと違和感に気づき、声のしたほうに頭を倒した。

 ベッドに頬杖をついて、二宮先輩がにっこり微笑んでいた。

 なんでここに? いつからここに?

「な、なな、なに!」

 がばりと上半身を起こし枕元に体を引き寄せる。ついでに布団も抱きしめる。

 もしや寝顔を見られた? いびきも歯ぎしりもしていないと信じたいけれど、半目になっていた可能性もないとは言い切れない。顔が真っ赤に染まっていく。

 なんなの! 勝手に見ないでほしい!

「焦る江里乃ちゃんとか、レア」

 狼狽える私を見て、先輩が満足そうに目を細めている。

「テストが終わって暇だし保健室で時間潰そうとしたら、先生から江里乃ちゃんが来てるって聞いて、見守ってみた」
「見守るってなんですか」
「その調子だと元気そうで安心だな。よかったよかった」

 なんかもういろいろ吹っ飛んだよ!

「じゃあ、デートでも行くか」
「――は?」

 じゃん、と効果音をつけて、先輩が私の鞄とコートを掲げた。なんでそれを先輩が持っているのか。




 私は二時間近く眠っていたらしい。

 目が覚めたのはもうすぐ五時間目が終わる時間で、六時間目には出席することは可能だった。けれど、先輩の勢いに負けて、なぜか今ふたりで電車に揺られている。

 家とは真逆の方向に進む電車の中、隣にいる先輩は楽しげだ。

「どこに行くんですか?」
「秘密のほうがデートって楽しいだろ」
「デートって」

 好きな人がいるくせに、という言葉を呑み込む。