「今日は無理だけど、明日、みんなで出かけようよ」

　希美が安堵の表情を浮かべながら提案した。

　いいじゃん、カラオケがいい、しゃべるだけでもいい、最近新しいカフェができたと話すみんなの姿がうれしくなる。ひとりほっと胸を撫でおろした。

　相手が気持ちをはっきり言ってくれる優子でなければ、そばに私や優子の気持ちをやさしさで包んで代弁してくれる希美がいなければ、こんなに早く教室の空気は軽くならなかっただろう。

　だからこそ、余計に自分がいやになる。

　どうして、ふたりはそんなふうになれるのだろう。

「そういえば五時間目、日本史の授業抜き打ち小テストらしいよ」
「えー！　なにそれ、信じらんない！」

　どこの範囲？　と優子が取り出した教科書をみんなが覗き込む。

「今の時期だから、一年間の総復習みたいな問題じゃない？」

　三学期の期末テストは、一応試験範囲があるけれど総復習の意味合いも含んでいるので、一学期や二学期の内容も含まれる。今日の小テストも同じだろう。忘れていないだろうな、という先生からのメッセージだ。

「えーそんなの無理じゃん！　忘れたし」
「見れば思い出すよ、たぶん」

　小テストなので重要な部分しか問題に出さないはずだ。そう伝えると、

「あたしは江里乃みたいにできないんだよー」

　と優子が諦めムードになって教科書を閉じた。

　なんでもできる。勉強や運動ができると、そう思われるのかもしれない。

　でも、本当の私はなにもできない。



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　　　私の意見なんか聞かないほうがいいですよ
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　　　余計なことばっかり言っちゃうので
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　　　先輩をいやな気持ちにさせちゃうかも
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　　　気持ちを伝えるって　私には難しいんです
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