「やろうと思ってたことができないし、来週まとめてやるわ」
このまま私がここにいると、部屋の空気も悪いだろうし。
「いいけど……佐々木さんの仕事とか手伝っても」
「なんで? 佐々木さんの仕事だし、来週の私の仕事を佐々木さんが手伝ってくれるわけでもないじゃない」
関谷くんの言葉を無視するように、コートを羽織る。ちらりと佐々木さんを見ると、しょぼくれているのがわかった。できればこれで責任感というものを感じてもらえたらうれしいのだけれど。
「じゃ、お先に」
中にいるメンバーに挨拶をして廊下に出た。人気のない廊下は、冷気に包まれていて、そこから早く逃げ出さなくてはと足を動かす。
まだ授業が終わってから一時間程度だからか、校内には人の気配が漂っている。このタイミングで靴箱に行くのは危険だろうかと考えながら階段を降りると、やっぱり昼休みよりも出入りする人が多かった。
誰かに見られるかもしれないので、一時間ほどどこかで過ごすべきだろうか。廊下で考え込んでいると「松本」と関谷くんの声がした。
「どうしたの?」
「佐々木さんも反省してると思うから、さ」
なんの話だろうか。
ん、と眉根を寄せると「怒ってるんだろ」と言われた。
「いや、別に」
来週にはちゃんとしてほしいなと思っているだけだ。けれど、その言葉の意味を関谷くんは理解しているのかしていないのか「松本の言っていることは正しいよ」と言った。
「正論だけど、それじゃ解決にならないんじゃないかな」
「どういう意味? 笑って許さないとだめってこと?」
「そうじゃなくて、せめて仕事を手伝って気持ちのフォローをするとか」
関谷くんの提案らしき内容に、うんざりと肩を落とした。
気持ちのフォローって。なんで私がそんなことをしなくてはいけないのか。
「あのさ、別に仕事を手伝わないのは怒ってるからじゃなくて、助けてばかりじゃ成長しないから。それだけ。今まで何度も手伝ってきたけど、そんなんじゃこの先もずーっと同じことを繰り返すじゃない」
私の反論に、関谷くんは困ったように眉を下げる。
「正論はいつも正しいとは限らないよ。それが松本のいいところだとは思うけど、でも」
いいところなら、どうして〝でも〟と言葉が続くのか。正しいのなら、どうして私が責められなくてはいけないのか。仮にも一時期付き合っていた相手に、私の気持ちはなにも伝わらないのはなぜなのか。
いつもいつも――。
「正論は、正しい論だから、正しいに決まってるだろ」
なんで、と目をつむると同時に、肩を後ろに引かれる。
「生徒会長がすべきことは、江里乃ちゃんを責めることじゃなくて、江里乃ちゃんのフォローなんじゃねえの?」
このまま私がここにいると、部屋の空気も悪いだろうし。
「いいけど……佐々木さんの仕事とか手伝っても」
「なんで? 佐々木さんの仕事だし、来週の私の仕事を佐々木さんが手伝ってくれるわけでもないじゃない」
関谷くんの言葉を無視するように、コートを羽織る。ちらりと佐々木さんを見ると、しょぼくれているのがわかった。できればこれで責任感というものを感じてもらえたらうれしいのだけれど。
「じゃ、お先に」
中にいるメンバーに挨拶をして廊下に出た。人気のない廊下は、冷気に包まれていて、そこから早く逃げ出さなくてはと足を動かす。
まだ授業が終わってから一時間程度だからか、校内には人の気配が漂っている。このタイミングで靴箱に行くのは危険だろうかと考えながら階段を降りると、やっぱり昼休みよりも出入りする人が多かった。
誰かに見られるかもしれないので、一時間ほどどこかで過ごすべきだろうか。廊下で考え込んでいると「松本」と関谷くんの声がした。
「どうしたの?」
「佐々木さんも反省してると思うから、さ」
なんの話だろうか。
ん、と眉根を寄せると「怒ってるんだろ」と言われた。
「いや、別に」
来週にはちゃんとしてほしいなと思っているだけだ。けれど、その言葉の意味を関谷くんは理解しているのかしていないのか「松本の言っていることは正しいよ」と言った。
「正論だけど、それじゃ解決にならないんじゃないかな」
「どういう意味? 笑って許さないとだめってこと?」
「そうじゃなくて、せめて仕事を手伝って気持ちのフォローをするとか」
関谷くんの提案らしき内容に、うんざりと肩を落とした。
気持ちのフォローって。なんで私がそんなことをしなくてはいけないのか。
「あのさ、別に仕事を手伝わないのは怒ってるからじゃなくて、助けてばかりじゃ成長しないから。それだけ。今まで何度も手伝ってきたけど、そんなんじゃこの先もずーっと同じことを繰り返すじゃない」
私の反論に、関谷くんは困ったように眉を下げる。
「正論はいつも正しいとは限らないよ。それが松本のいいところだとは思うけど、でも」
いいところなら、どうして〝でも〟と言葉が続くのか。正しいのなら、どうして私が責められなくてはいけないのか。仮にも一時期付き合っていた相手に、私の気持ちはなにも伝わらないのはなぜなのか。
いつもいつも――。
「正論は、正しい論だから、正しいに決まってるだろ」
なんで、と目をつむると同時に、肩を後ろに引かれる。
「生徒会長がすべきことは、江里乃ちゃんを責めることじゃなくて、江里乃ちゃんのフォローなんじゃねえの?」