優子が机に突っ伏してうとうとしながら言うと「面白いもんね」と希美が笑った。

「希美も徹夜したの?」
「わたしは休日に観終わっちゃった」
「その方法があったか! でも無理! 平日も見ちゃうし、土日は遊びたい! 」

 優子は机を叩いて悶えている。

 そんな優子に、希美は「平日はアニメとかにしたらどうかな?」とか「シーズンごとに休憩を挟むといいよ」と提案をする。

 やっぱり、今日の希美はいつもどおりだよなあ。

 もう、気にしていないのだろうか。この場合は私も昨日のことはなかったことにしたほうがいいのだろうか。

 希美が気にしていないならそれに越したことはない。

 でも、心が晴れない。

 それは、少なからず私が希美にいらだちを感じているからだろう。だって、そのせいで昨日の放課後からずっと鬱々とした気分で過ごす羽目になったのだ。しかも、嫉妬される理由がわからない。勘違いされるような行動を私がとったわけではない。ただ、希美が私を意識しているだけで、それはもとはといえば瀬戸山のラブレターのせいで。

 いっつもこうだ。

 以前、優子にも米田くんと話していたことで嫉妬されたことがある。まだふたりがつき合う前で、私は優子が米田くんのことを好きだと知っていた。友だちの好きな人だからって話しかけられて無視するわけにいかず、ちょっと立ち話をした。

 それだけなのに優子は私に嫉妬して、そのことに私もいらだって、ケンカになり数日間まったく話をしなかったことがある。優子が米田くんに告白し、つき合うことになったことで仲直りしたのだけれど。

 私が米田くんや瀬戸山とふたりで出かけたとか、実はふたりのことが好きで奪おうとしているとかだったら、そりゃ嫉妬するだろう。

 でも、そうじゃない。なにもしていないのに、優子も希美も、相手が私のことを好きなんじゃないかと勝手に想像を膨らませて不安になっているだけ。

 ふたりに限らず、今まで見知らぬ女子にも嫉妬されることは何度もあった。名前すら知らない男子との関係を疑われたことも。

 本当にうんざりする。

 そういう気持ちが微塵もわからないわけじゃない。私だって、今まで経験したことがある。二ノ宮先輩の言うように、それは仕方のないことなのだろう。でも、思うだけにして黙って自分で対処してほしい、というのが本音だ。無関係な誰か――主に私――を巻き込まないでほしい。

 まあ、相手が希美なのでそんなことは言えないけれど。多少態度に出ることはあっても、ああいうことを口にすることはない希美がつい口にしてしまった、ということは、それだけ不安を感じたのだろう。

 そう思うと、できるだけそれを取り除いてあげたいとは、思う。

「そういえば、今の観終わったらおすすめのがあるんだよ」

 希美が優子を海外ドラマの沼に引きずり込もうとする。