吊り上がり気味の目元や、ショートヘアもその印象をよりいっそう強めている気がする。女子にしては高めの身長もあるのかもしれない。

 そんな私と、希美は正反対だ。

 希美とは、一年のときに同じクラスになって親しくなった。いつもにこにこしていて、誰かの意見を否定したり、誰かを悪く言ったりしない、穏やかな性格をしている。頼まれごとをすれば笑顔で引き受けるし、なにがいいかと訊けば「なんでもいいよ」とか「どっちでもいいよ」とばかり口にする希美のことを、八方美人で優柔不断だとはじめは少し苦手に思っていた。

 けれど、そうじゃなかった。

 希美はただ、やさしいのだ。苦手なこともいやなことも口にしないのは周りのことを気にしすぎているだけ。ケンカをしても相手を悪く言わないのは、相手の気持ちをやさしく理解しているから。さっきのように、やさしい言葉に置き換えることができるのは、それは、希美が優しい気持ちで言葉を受け止めてくれているからだ。

 流行りものが大好きで喜怒哀楽がはっきりしている優子と仲良くできるのも、きっと希美のおかげだ。希美がいなければ、ずっと前に嫌われていたんじゃないかと思う。優子だけではなくほかの友だちも、希美というクッションがいてくれるから、私のそばにいてくれるのだろう。

 ときどき、どうしてこんないい子が私なんかと仲良くしてくれるんだろう、と思うくらいに、私は希美のことが大好きで、憧れている。

 それを口にしたら、また嫌みだと言われるので黙っておくけれど。

「どうしたの江里乃、体調悪いの?」

 優子が身を乗り出して、私の顔色をまじまじと観察する。その様子に、ふは、と噴き出してしまった。

「なんで笑うのよー、急に黙り込むから心配したのにさあ」
「ごめんごめん、優子がかわいいなーって思っただけ。ほら、さっさと訳さないと授業始まるよ。私も見てあげるから」
「やったー! 希美と江里乃のペアなら完璧じゃん!」

 素直に両手を広げて喜ぶ優子を見ると、なんだかんだ放っておけなくて手を差し伸べてしまう。

 鞄からペンケースを取り出すと「あれ? 新作?」と希美が気づいた。

「あ、うん。お気に入りなの」

 それは、ブルーのキャンバス生地に花柄と猫の刺繍が施されているもので、今日はじめて学校に持ってきたものだ。優子もそれを見て「かわいい!」と手に取った。

「いつもどこで買ってるのー? この前のもかわいかったしパスケースもハンカチもかわいいし。同じ店だよねー?」
「ふふ、秘密」

 でしょでしょ、と内心にやにやしながら答えた。

 実はこれは、私が自分で作ったものだ。