_______________________
_______________________
_______________________
   私まで先輩の告白 どきどきしてきます
_______________________
   音楽ができるのもすごいですね
_______________________
   私の趣味は刺繍くらいしかないなあ
_______________________
_______________________
   先輩の想いを聞いてると
_______________________
   私も早く恋がしたくなります いいなあ
_______________________
_______________________
_______________________


 次の日の朝、靴箱の前で昨日書いた自分の文章を読み直す。

 これを書いた瞬間は、間違いなくそう思っていたし、今も同じ気持ちを抱いている。けれど、それ以上に煩わしさを感じている。

 昨晩も家でこの返事を見て書き直そうかと思ったものの、余計なことを書くべきではないし、話がごっちゃになってしまうとやめた。

 でも、やっぱり違和感が拭えない。

「……恋って、面倒くさいな」

 ため息に本音を交ぜて、地面に落とした。

 そう思う理由は、昨日の希美の態度だ。希美はずっと笑っていた。私と瀬戸山の関係を気にしてしまうのをごまかすように、考えないように、無理しているのがありありと伝わってくるほど普段の五割増しくらいで笑顔を顔に貼り付けていた。

 希美が心配するようなことはなにもない。

 私は瀬戸山のことを好きじゃない。それに、瀬戸山は希美のことが大好きだ。なにを気にすることがあるのか。

 その言葉を何度も呑み込んだ。

 希美が言わない以上、私が先回りして否定するのは余計に不安にさせるような気がしたし、口にしないのは希美も言いたくはないからだろう。

 瀬戸山が希美のことを大事に想っていることは、誰の目にも明らかだ。なのに、希美本人がどうして不安に思うのかさっぱりわからない。なんでそんな無駄なことで頭を悩ませるのか。

 直接それを言われても困るけれど、態度に出ているのに黙っていられるのも困る。

 結局、希美と過ごした放課後はそれなりに楽しかったものの、気疲れもした。

 どうしようかなあ、とページをめくる。

『一緒に恋愛について学べばいいじゃん』

 ふとこのやり取りを始めるきっかけになった先輩の文字が目にとまる。

 このノートの中の〝ななちゃん〟は、恋を知らない。

 なんのために私は先輩と交換日記と続けたいと思ったんだっけ。先輩との会話から、自分でさえも知らない私を見つけたかったんじゃなかったっけ。なのに、この気持ちを隠しては意味がないのではないか。

 きゅっと唇を噛んで、その場でペンを取り出した。昨日書いた文章もそのままで、新たに書き足していく。

 私は〝ななちゃん〟だと思うと、すらすらとペン先が動いた。



_______________________
_______________________
_______________________
   でも恋って ちょっと面倒くさいね
_______________________
_______________________
   嫉妬したりされたり なんだかな
_______________________
   それでも 恋っていいものなの?
_______________________
_______________________
_______________________