今まで私に告白してくれた人の中にも、まったく接点のなかった人はいる。その人たちは、私のどこを好きになり、なにを思って告白したのだろう。私自身、そういう人からの告白は付き合う返事をせずに数回出かけたりしてから考えて答えを出している。それでも、好きだから、ではなく、好きになれそうだから、というなんとなくの予感を頼りにしているだけ。

 もし、私に好きな人ができたとして、それがほとんどしゃべったことのない相手だったら、私はおそらく告白なんてしないだろう。そもそも、そんな人のどこをどうやって好きになるのかさっぱりわからない。

 なのに、告白する。
 なんで?

 私が今まで誰にも告白しよう、と思ったことがないから、それほど好きになった人がいないから、わからないのだろうか。

 はあーっとかじかむ手に息を吹きかけてから、ノートを取り出した。

 先輩も、好きな人に告白すると言っていた。

 先輩は、どうして想いを伝えたいと思ったのだろう。

 疑問を素直に言葉にできる、私の中の〝ななちゃん〟が、ひょっこりと顔を出す。



_______________________
_______________________
_______________________
   先輩は卒業までに告白するんですよね?
_______________________
   卒業するから 会えなくなるから
_______________________
   告白するんですか?
_______________________
   その人とは、どんな関係なんですか?
_______________________
_______________________
_______________________


_______________________
_______________________
_______________________
   たしかに会えなくなるってのもあるけど
_______________________
   結構いけるんじゃねって思ってたり
_______________________
   いや どうかなー どうなんだろー
_______________________
_______________________
   でも今やらないと 終わっちゃうしな
_______________________
   そのためにも いい歌作らないと!
_______________________
_______________________
_______________________




 朝、教室で返事を書いてから、まだ登校してくる生徒が少なかったこともあり急いで靴箱に入れた。あまりに返事が早すぎて気づかれていないかもしれない、と思いつつも昼休みに確認すれば、交換日記には新しい返事が書かれていた。

 いけるんじゃないかな、というのは、先輩と想い人はなかなかいい関係なのだろう。やっぱり、前に中庭で話をしていた後輩らしい女子のことだろうか。先輩の場合仲のいい人が多いから当たりをつけるのはなかなか難しい。

 でも、やっぱりそうなのか。

 自信がないとなかなかできないものだよね。瀬戸山が特殊なのか。

 でも、先輩は親しくなくても告白するかもしれないなと、最後の一行から感じた。〝終わっちゃう〟という考えは私にはなかったことだ。告白することのほうが〝終わっちゃう〟ような気がしている。