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   え なんで?
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   別に先輩でも後輩でもいいじゃん
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   俺は気にしないんだけど
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   せっかくの縁だしさー
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   気を使うなら名前聞かないし!
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 まさか返事があるとは……。

 もう交換日記は終わったと思った。あれだけはっきりと断ったのだから、二ノ宮先輩も返事はしないだろう、と。

 けれど。

 まさか次の日の朝、昇降口に『左手の右手の上で 待っている』というメモが貼られているとは。もう二度と開けるつもりのなかった靴箱を覗いてみると、案の定、ノートが入っていたのだ。おまけにこの返事。つまり、これからも交換日記を続けましょう、ということなのだろう。

「って、言われてもなあ」

 返事からは、やさし さが感じられた。先輩とか後輩とか、そんなこと気にしない人であることは、普段の先輩からもよくわかる。

 昇降口の扉にメモを残して返事を書いたことを知らせてくれたのは、相手(私)がどうするのか考えての行動だろう。このメモがなければ、私は靴箱を見なかった。

 人の気持ちに寄り添える人だ。
 相手がどうするかを想像することのできる人。

 自分勝手な人だと思っていたことが、申し訳なくなる。私は、勝手に先輩を自分の物差しに当てはめて見ていただけなんだと思い知る。何度も会話をしていたのに、私は先輩を知っているつもりになっていただけなのかもしれない。

 でも。

「無理だってば!」

 思わずひとり声を上げた。

 なんで食いつくの。おかしいでしょ。なにこれもう一回断らないといけないの? 言いにくいことを二度も言わせないでほしい!




「江里乃、今日ずっと険しい顔してるけどどうしたの?」

 希美の声に「え?」と思ったよりも大きな声を発してしまった。その様子に、希美は一瞬目を丸くしてから、ますます心配そうに眉を下げる。

「生徒会忙しすぎるんじゃない? 大丈夫?」
「あー、うん、大丈夫大丈夫」