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   今 好きなやつとかいないってこと?
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   それとも今まで一度もねえの?
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   でも 俺も実は今が初恋なんだよなあ
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   俺のが恋愛の先輩ってことか!
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   うわ 上から目線になってるじゃん!
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   くやしいー! でもそのとおりだなあ
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   くやしいけど 教えてほしい!
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 返事が届いていたのは、その日のお昼だった。

 希美にも優子にもいったいなにがあったのかと何度も聞かれるくらい、その日ずっと、私の様子はおかしかったらしい。それもそのはずだ。ちょっとでも気を抜くと、すぐにノートのことを思い出してしまい、あわあわしていたのだから。

 彼はどんな返事をくれるのだろう。

 思い返せば、自分の書いたものはあまりにも乙女チックすぎたのではないか。

 あれを読んで、相手は戸惑うのではないかと不安になる。

 もしかすると、返事をくれないかもしれない、でももう届いているかもしれない、と休み時間のたびに靴箱を見に行ってしまった。

 つき合っている人からメッセージの返信がないことなんて、今まで一度も気にしたことのない私がこんな行動を取るのも信じられず、それもまた落ち着かなくさせる。

 結局昼休みも、お昼ご飯を食べる前に生徒会の仕事とウソをついてこっそりと靴箱に確認しに行ってしまった。中には相変わらずノートが入ったままだったけれど、念のために手にしてページをめくると彼の文字が残されていた。

 それを見た瞬間、体がふわっと浮いたみたいに軽くなった。

 持ち主の彼も、この交換日記を楽しみにしていてくれるのかもしれない。じゃなければこんなに早く返事はくれないだろう。ただ、頻繁にここに来ているといつか鉢合わせしてしまう可能性もあるので気をつけなければ。

 だからこそ、今すぐここを立ち去ったほうがいい。もしかしたら私と同じように昼休みに来るかもしれない。わかっているのに、返事に顔がほころびその場で返事をしてしまった。

 彼の、気さくな返事がうれしかった。

 そんなテンションが丸わかりの返答を残してしまったことに、教室に戻っている途中からまた落ち着かなくなる。

 私ってこんなに情緒不安定だっただろうか。私の中に違う私がいるみたいだ。

 ああ、よく考えたら、文章すっごく馴れ馴れしかったかも。

 相手もずっと砕けた口調なので大丈夫かな。

 私も、毎回丁寧じゃなかったし、いいよね。

 書き直したほうがいいかな。でも、また靴箱に戻るのはリスキーだ。諦めるしかない。今更悩んでも仕方ないでしょ、と普段の冷静な私を呼び起こして自分を叱咤した。

 そのとおりだ、わかっている。
 わかってるけど!

 壁に手をついて、はあっと息を吐き出した。本当になにしているんだろう、私は。

 いつもなら、どんなことでも冷静に対処できていたのに。感情が制御できないってなかなか体力を消耗するんだなあ。

 窓の冷たいガラスで頭を冷やそうと額をつけると、その先にいる人影に気がついた。

「……二ノ宮先輩?」

 三階の窓から見えるのは、ちょうど中庭だ。そこにはベンチがふたつあり、三年生のたまり場になっている。明るい髪色のせいで、先輩は誰よりも目立っていた。

 もともと目立っているのに、これ以上注目されてどうするのか。