_______________________
_______________________
_______________________
マジで? そう言ってもらえてほっとした
_______________________
_______________________
これ好きな子に歌にして贈るつもりでさ
_______________________
よければこれからもアドバイスくれない?
_______________________
女子の感想聞かせてほしい!
_______________________
恋とか愛とか理想とか いろいろ!
_______________________
_______________________
_______________________
あの返事で大丈夫だったらしい。
次の日の朝。戻ってきたノートを手にほっと胸を撫でおろした。
私が靴箱にノートを返却したのは昨日のお昼。放課後、念のため靴箱を覗いたときには、まだそこにあった。それが今朝には戻ってきている、ということは、持ち主は私よりも遅い時間まで学校に残っているか、もしくは私より早い時間に学校に来ているか、どちらかだ。そんな人は限られている。普段ならともかく、最近の私は生徒会の仕事でほぼ毎日下校時刻まで学校にいる。
いったい誰だろう。
いや、そんなことよりも。
靴箱の前でノートを広げたまましばらく考える。
「女子の、感想……? アドバイス……? これからも?」
え? なにそれ。あれ以上の感想なんてもうないんだけど。
いや、そもそもこのポエムが歌詞だったことにも驚きだ。今どき好きな子に歌を贈るなんて、このノートの持ち主は相当ロマンチストのようだ。
正直女子としては「サムいしイタいからやめてほしい」という感想が一番に出てくる。いや、人によっては心に響くかもしれないけれど。もしくはすっごい有名なアーティストとか、百歩譲ってめちゃくちゃ歌がうまいとか。
そんな返事はさすがにできない。本人がやりたいというのなら、否定するのは失礼だ。それに実はネットで人気の覆面歌手という可能性もないとは言い切れない。
「でもやっぱり、好きな人に向けた内容だったんだなあ」
今現在、胸の中にある想いを直接相手に伝えるための言葉だったらしい。
そういう意味では、関係のない私が読んでも照れてしまったというのは、すごいパワーのあるものだと思う。つまり、このままでいいのではないか。
私には、そのくらいの感想しか伝えられない。このやり取りの文章からしても、彼は素直な人なのだろう。きっと、いや絶対、私よりも感受性豊かな人だ。
このノートの彼のほうが、私よりもよっぽど恋を知っている。
誰かを想う気持ちを。
それは、誰かに想われる気持ちにもつながっている。
――そして、私はそれがわからない。
勉強もスポーツも、今までそれほど苦労したことがない私にとって、恋愛は唯一で最も不得手なジャンルだ。
恋バナは嫌いじゃない。かっこいい男子の話は盛り上がるし、友だちの片想いの話とかは聞いていてかわいいなあと思う。友だちが内心好きな人とか意識している人が誰なのか、ということには、結構勘がいいほうだ。
でも、自分のことを話すのは苦手だ。今まで数人の人と付き合ったという経験はあるけれど、訊かれたら答えるだけで自分から話したことはほとんどない。それが落ち着いているとかクールだとか大人っぽいだとか思われて、何度かアドバイスを求められたこともある。
でも、わからないのだ。