今まで交換日記には、ウソはなかった。実際の私では口にできない本音ばかりを綴ってきた。だからこそ、どんな理由でもこのノートにウソを書きたくない。
つまり、やっぱりなにもかもが中途半端。
逃げ腰で言い訳ばかりで、同じ場所にぼーっと突っ立っているだけ。
行動に移さずうじうじしている自分は、大嫌いだ。うっとうしい。
わかっているならどうにかしなさいよ。
その、繰り返し。
ずっと私の脳裏には、先輩がいる。その先輩の隣には私じゃない女子がいた。そんなもの見たくないのに、いつまでも居座って出て行ってくれない。
嫉妬で、気が狂いそうだ。
先輩が好きなら応援すべきなのに、できない。
フラれてしまえばいいのに。うまくいかなかったらいいのに。
そんなことを願うたびに自分を嫌いになる。なのに、願わずにはいられない。
自分がこの状況になってはじめて、希美の気持ちがわかった。
「私と瀬戸山はなんでもないんだよ……ほんとに、心配しないでほしい」
「え? え? どうしたの?」
「気にしてたでしょ? 私、希美の気持ちをわかってなかった。そんな心配されても、どうしようもないしって、なんで余計な心配するんだろうって」
もごもごとしゃべる私の声が、どれだけ希美にちゃんと届いているだろう。けれど、希美は「ううん、そのとおりだよ」と答えてくれた。
「なにしてんの、江里乃」
今度は優子の声が聞こえてきて、
「ごめん、優子」
と希美と同じように優子にも謝る。
「なに急に。どこかにあたしの悪口でも書き込んだの?」
「そんなことしないし」
落ち込んでいるのに、ふふっと笑ってしまう。
「前に米田くんのことで嫉妬した優子に、ひどいこと言ったよね」
言葉にすると、優子が「ん」と不思議そうに呟く。そしてたっぷり無言で思い出してから「ああ」と手をぽんっと叩いた。
「いつの話してんの。今まで忘れてたんだけど。っていうかどうしたのマジで」
「もしかして、江里乃、誰か、好きな人がいるの?」
希美が、私に訊いた。
しばらく反応を悩んでから、こくりと頷く。突っ伏した状態でもふたりはそれに気づいてくれたらしく、優子が「え? 誰?」と椅子を引き寄せて近くに座った。
「ごめんね、江里乃。江里乃に嫉妬したのは、わたしが悪いんだよ」
私の手に、希美の手が触れる。
「瀬戸山くんのことも、江里乃のことも、信じている。ただ、わたしが、自分に自信がないだけで、ふたりに失礼なことをしただけなの」
その気持ちを、私はわかってあげられなかった。心のどこかで、希美の嫉妬にうんざりしてバカにしていたと思う。どんな理由があっても、あのときの希美は嫉妬という感情に苦しんでいたはずなのに。理由なんて二の次で、あのときの希美の気持ちを想像すらしていなかった。
つまり、やっぱりなにもかもが中途半端。
逃げ腰で言い訳ばかりで、同じ場所にぼーっと突っ立っているだけ。
行動に移さずうじうじしている自分は、大嫌いだ。うっとうしい。
わかっているならどうにかしなさいよ。
その、繰り返し。
ずっと私の脳裏には、先輩がいる。その先輩の隣には私じゃない女子がいた。そんなもの見たくないのに、いつまでも居座って出て行ってくれない。
嫉妬で、気が狂いそうだ。
先輩が好きなら応援すべきなのに、できない。
フラれてしまえばいいのに。うまくいかなかったらいいのに。
そんなことを願うたびに自分を嫌いになる。なのに、願わずにはいられない。
自分がこの状況になってはじめて、希美の気持ちがわかった。
「私と瀬戸山はなんでもないんだよ……ほんとに、心配しないでほしい」
「え? え? どうしたの?」
「気にしてたでしょ? 私、希美の気持ちをわかってなかった。そんな心配されても、どうしようもないしって、なんで余計な心配するんだろうって」
もごもごとしゃべる私の声が、どれだけ希美にちゃんと届いているだろう。けれど、希美は「ううん、そのとおりだよ」と答えてくれた。
「なにしてんの、江里乃」
今度は優子の声が聞こえてきて、
「ごめん、優子」
と希美と同じように優子にも謝る。
「なに急に。どこかにあたしの悪口でも書き込んだの?」
「そんなことしないし」
落ち込んでいるのに、ふふっと笑ってしまう。
「前に米田くんのことで嫉妬した優子に、ひどいこと言ったよね」
言葉にすると、優子が「ん」と不思議そうに呟く。そしてたっぷり無言で思い出してから「ああ」と手をぽんっと叩いた。
「いつの話してんの。今まで忘れてたんだけど。っていうかどうしたのマジで」
「もしかして、江里乃、誰か、好きな人がいるの?」
希美が、私に訊いた。
しばらく反応を悩んでから、こくりと頷く。突っ伏した状態でもふたりはそれに気づいてくれたらしく、優子が「え? 誰?」と椅子を引き寄せて近くに座った。
「ごめんね、江里乃。江里乃に嫉妬したのは、わたしが悪いんだよ」
私の手に、希美の手が触れる。
「瀬戸山くんのことも、江里乃のことも、信じている。ただ、わたしが、自分に自信がないだけで、ふたりに失礼なことをしただけなの」
その気持ちを、私はわかってあげられなかった。心のどこかで、希美の嫉妬にうんざりしてバカにしていたと思う。どんな理由があっても、あのときの希美は嫉妬という感情に苦しんでいたはずなのに。理由なんて二の次で、あのときの希美の気持ちを想像すらしていなかった。