つき合ったときからわかっていたから、怒ることも悲しむこともないように、そういうつき合い方をしていたのかもしれない。自分が傷つかないように。
それは、二ノ宮先輩への気持ちも同じだ。先輩の好きな人が自分だと思ったから、私は先輩への想いを受け入れた。もしも先輩の好きな人が自分だと勘違いすることがなければ、私は決して自分の気持ちを認めようとはしなかった。
自分の気持ちが報われるのを確信してからしか、自分の気持ちと向き合えない。
無意味な片想いをすることから逃げて、自分を守ろうとしていた。
好きな人がいる、運命の相手だ、と断言できる澤本さんには、考えられない思考回路だろう。
「最低だな……」
はは、と笑いとともに独りごちた言葉は、床に落ちてそのままぽつんと取り残される。いつまでも、消えずにそこにある、本当の私。
本当に、私は、なんてずるくて弱いのか。
ノートの中の〝ななちゃん〟はあんなに素直になれるのに、実際の私はウソばかりついている。自分にも、まわりにも。
そんな私を、先輩が好きになるわけないのに、なにをうぬぼれていたのだろうか。
なにより、自覚したあとでも、早くやめてしまいたい、と、どうしたらこの感情から解放されるのだろうと、そればかりを考えている自分に失笑する。
先輩が卒業してしまえば、顔を見ることがなくなれば、自然に消えていくのだろうか。だったらはやく、卒業してほしいとさえ、思う。
こんなに、自分のことをいやになったことはない。
好きになった人を運命の人だと、自信満々に答えた澤本さんが、蘇る。先輩が澤本さんのことが好きならば、私にはどうしようもない。彼女に私が敵うわけもない。
先輩が認める、素直でウソのつかない彼女なら、こういうとき、どんな気持ちを抱き、どんな行動を取るのだろう。
私も彼女のようだったら、先輩は私を好きになってくれたのだろうか。
こんなに、誰かを――澤本さんを――羨ましいと思ったことは、ない。
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私は ずるくて うそつきで
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弱虫で 頑固で プライドが高くて
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だから自分の気持ちにも自信がない
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先輩の好きな人みたいな人ならよかったのに
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