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   俺もそうなるよ
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   深く考えなくていいんじゃない?
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 先輩からのフォローに、どう返していいのかわからないまま、数日を過ごした。先輩からの催促があってもなくてもいやだと、靴箱も覗いていない。

 ありがとうございます、だけでもいいはずなのに、うれしくもなんとも思っていない状態で、その言葉を文字にすることができない。

 それが申し訳なくて、先輩を見かけても声をかけず、見つからないようにと避けて過ごした。ただ、先輩にとってそれは気にするようなことでもないのだろう。いつものような笑顔で誰かと話していたり、ひとりでいてもしばらくすれば人が集まっている。

 先輩の日常に、私はなんの影響もない。

 そう思うと、今までうぬぼれていた自分を消してなかったことにしたくなる。

 悔しくて、惨めで、自分の世界からも先輩を消してしまいたくなる。こんなのはただの逆恨みだとわかっているのに。自分のこんなみっともない面は、知りたくなかった。




「じゃあね」

 授業が終わって、教室に残っている希美と優子に手を振る。ふたりは今日も彼氏とデートらしい。理系コースの授業が終わるまで、教室で過ごすのだろう。

 希美が少し心配そうな顔をしながら、「また明日ね」と言った。

 いつもどおり振る舞っているつもりだけれど、希美には勘づかれているようだ。ただ、それを訊いてこない希美のやさしさに救われる。

 せめて今日が生徒会の日だったらなあ。なにも考えずに仕事に没頭できるのに。仕方がないので帰りに手芸店でも寄って、たっぷり刺繍の材料を買おうかな。

 そんなことを考えていると、渡り廊下の向かい側から関谷くんがやってきて「松本」と私を呼んだ。

「どうしたの」

 私を探していたのか、関谷くんの息が切れている。

「早めに伝えておいたほうがいいかなって思って」

 生徒会の件でなにか問題でも発生したのだろうか。でも、それにしては関谷くんの表情は暗くない。前にデータが消えたときは、顔面蒼白だった。

「実は、佐々木とおれ、つき合ってるから」

 は、と間抜けな声を漏らす。

 いったいなんの報告なのか。そして、私はどういう反応をするのが正解なのか。

 関谷くんと佐々木さんがつき合った、との内容は、たしかに驚いた。ふたりがそういう関係だなんて、今の今まで知らなかった。

 けれど、なんでわざわざ私を探し出してまで伝えに来たのか。お祝いをしなければいけないのだろうか。