それは、みんなが先輩の人柄を好きだからだ。

 みんなが、先輩のやさしさに触れているから。

 ――私が、特別なわけじゃなかった。



 むしろ、私はただの後輩でしかなかった。

 距離で言えば、私よりも澤本さんのほうがずっと先輩に近いところにいるだろう。

 先輩の好きな人に、澤本さんはすべて当てはまる。好きな人とおそらく両想いの関係だということにくわえて、素直で、一生懸命で、馬鹿正直。きっと、親しくなると私も彼女にウソはつけなくなりそうな、そんな気がする。そのくらい、羨ましくて仕方がなくなるくらい、彼女は一直線に好きな人のことを想っている子だった。

 私は、あんなふうにはっきりと好きだと言えない。心の中でさえも、私は答えられないでいる。それは、彼女との性格の違いなのか、想いの違いなのか。

 目を伏せて、ゆっくりとさっきのぼった階段をおりていく。
 彼女は、好きになった人が運命の相手だと言っていた。その人も、自分のことが好きなのだと確信していた。

 だから、私の好きになった人は私の運命の相手ではない。私の好きな人は私ではない人を好きだから。

 じゃあ、私が先輩を好きだと思ったこの気持ちは、いったいなんなのだろう。

 私が先輩を好きになったきっかけを記憶の中から探し出す。前から先輩のことは知っていた。このノートを通して先輩を知り、普段の生活でも先輩と話すことが増えた。その中で、知らなかった先輩を知った。

 先輩に、救われた。
 だから。

 ……だから、なのだろうか。

 先輩との思い出を引っ張り出す。笑顔とか、かけてもらった言葉とか、触れた肌とか。そのひとつひとつに胸が苦しくなる。

 それを私だけの特別だと感じたから、うれしかった。

 でも、それはただの勘違いだった。

 じゃあ、私が好きだと思ったものも、勘違いなのだろうか。



 数日前は明確に好きだと思えた気持ちに、自信がなくなっていく。





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   やさしくて そばにいると
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   すごく幸せで 苦しくなる人です
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   でもやっぱり
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   よく わからないです
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