彼の言う“時間が解決してくれる私の不満”に、本当に私が咎めたかった不満たちは欠片としても含まれていなかった。

私の誕生日までも割り勘でお会計を済ませるのは嫌だ、だとか、もう少し交通に便利のいいアパートに住みたい、だとか、そういう時折私の零す愚痴たちを拾って、それに“不満“”と名前をつけた彼は、私のことを10から理解していない。


将来のために今を頑張っている貧乏学生の彼、大学まで徒歩十数分で通学することができるアパートの部屋。


私と彼を造るその環境に寂しさや不便を感じていたとしても、私は彼にも、誰にも、“不満”と言ちたことは一度としてないというのに。


私との時間を割いてまで女の人がいる飲み会には顔を出して欲しくないし、彼女という私の存在を認知しているにも関わらず、執拗に都合のいい女の人を紹介してくる友人とは距離を置いて欲しい。

二人の暮らしにつもるあれそれよりも、余程態度に表しているその“本当の不満”を彼は容易く汲み取って、それでいて器用に気が付かないふりをする。