土の季節が終わった。
木々草花は色若く咲き乱れ、誰にとっても待ち遠しい、そんな季節。
緑の季節が、やってきた。
タキは変わらず、この街にいる。
少し変わったことがあると言えば、アタシ達の関係かもしれない。

「今日はなんだか港が賑わってるね」
「あぁ、遠方漁に行ってた船が帰ってくるんだよ」

並んで歩くその姿は、前と変わらず。

「カレン、こっち」
「あぁ、ありがとう、タキ」

腕を引かれた直後、大きな荷物を乗せた台車が脇を通っていく。
タキはアタシの前で、もう壁を作っていない。
そんな雰囲気をちゃんと感じてる。

あの夜、全てを吐き出したタキはついでのように2つほど憶測を語った。
ひとつは今、自分を追っているのは家に来た村からの追手ではなく恐らく国からの差し向けになっている可能性が高いこと。
看病をしてくれていた村に届いた噂には“鬼が家族を殺して”とあった。
恐らくそれはもう、村で手に負える範囲を超え、国へと上奏されたのだろうと。
差向けられる兵の数も多くなっていることを流れながらも肌で感じている、と。

そしてもうひとつは自分の第六感のこと。
成長するにつれて力が増して、感情を感知する制御ができるようになったのではないかということだ。
それまで目を合わせたら勝手に相手の感情がわかってしまうため、人の顔をなるべく見ずに過ごしていたが、ある時に不意に子供と目が合ってしまったらしい。
けれどその時に、何も流れてこなかった、と。
見る方向へとタキが思えば見えたので、おそらく成長するにつれて制御するだけの力が見についたのだろう、と。
そして合わせて、満月に変わる瞳はもう、赤にしか色が変わることがなかった、と。

それについての心当たりがあったアタシは、タキに自分のことを打ち明けた。