アタシは改めて、タキの真正面から真っ直ぐにその瞳を見つめた。
そしてその手を取って決意を固める。
白薔薇は赤薔薇を待ち続けるのだ、永遠に。

「タキ。生きていることが、苦しいかい?」

尋ねると、ピクリとその手が反応する。
無言のままのタキの、その反応が肯定を表していた。

「アタシはタキのお父さんやお兄さんじゃあないから、その本当の気持ちは一切分からないけれどね。なんとなく、わかることがあるんだ」

顔を上げたタキの瞳は、あの年初めの日に見た少年の瞳のようだ。

「お父さんも、お兄さんも。“生きろ”と、言った時に。タキが“生きる”という選択をしたときに、こうして苦しむということを、分かっていたんだろうと思う。けれどね、それでも。……それでも、やはりアンタに生きていてほしかったんだよ」

ぎゅっと、握った手に力を込める。
白薔薇は赤薔薇を想い、願い、祈る。
祈りは踊りになり、ここにある。
“君よどうか、生きていて。そして――……”




「タキに、生きて、幸せになってほしかったんだよ」

生きるということ。
それは、苦しみもがくこと。
タキのような経験をしているのならば、なおさらだ。
誰もかれも、苦しみも悲しみもない、そんな生き方はできるはずがない。
……けれど。

愛する者を想う時、どうしても思うものだ。
ただただ“生きてほしい”と。
自らの身を呈してまで、命を投げうってまで想うものであるならなおのこと。
自分の意志を背負ってほしいわけでもない、命を背負ってほしいわけでもない。
目の前で自らの命を差し出すようなことをすれば、苦しみ、絶望の淵に立たされることは容易に想像がついただろうけれど。
それでも、だからこそ伝えたのだろう。
タキがその命を投げ出さぬよう……伝えたのだろう。

「タキ、お父さんは“生きろ”と、言ったんだろう?お兄さんは、笑ったんだろう?幸せというのはね、誰にでも手を伸ばす権利が……誰にでも、掴む権利が、あるんだよ」

タキはアタシの手からするりとその手を抜き出すと、アタシの体に抱きつく。
肩に顔を埋め、ぎゅっと抱きしめる。
震えるその体を、アタシもそっと、抱きしめ返した。

人の考えが変わるなんてことはすぐには無理だ。
一生無理かもしれない。
けれど、話してくれたタキを想うとたとえお節介だろうと言わずにはいられなかった。
だってそうだろう?
何の因果で“赤魔女”の子孫が、この街……この“白薔薇”にやって来たのだ。
アタシがタキに惹かれたのは運命としか思えない。
白薔薇は白魔女の隠語だ。
伝わる舞は、祈りの舞。

「タキがこの街に流れて来たのは、運命かもしれないね」