カウンターの椅子に並んで腰掛け、手を合わせる。

「カレンさんが作ったご飯……初めてだ」
「そう言えばそうだね」
「クッキーはクリスマスに貰ったけどね」
「まぁどっちにしろ大した腕前じゃあないけどね。ジェイムズの料理とは比べないでおくれよ」
「いや、クッキーも美味しかったし、このご飯も美味しそうだ」

優しく笑って、タキは一口スープを口にする。
とはいえアタシが作ったものといえば……

「美味しいよ」
「そりゃあそうだろうとも。ジェイムズが作った鶏ガラスープを使ってるからね」

アタシの返答にタキは目を丸くして笑った。

「店主の特権だよ。……アタシがしたことと言えばパンを切って焼いたこと。卵を茹でたこと。野菜を切ってスープの味を整えたことくらいだね」
「まぁ味は決まっているようなものかもしれないけれど、それだってするのは手間だろう?ありがとう」
「なに、タキだって毎朝してくれてるじゃあないか」

お互いにお礼を言い合ってほのぼのとした朝食の時間が終わる頃に雰囲気を変えてポツリと呟いた。

「なぁカレンさん。……聞いて、くれるか?俺の昔話」
「タキが自分のことを話そうと思ってくれたのは、初めてだね」

こちらを見ようともしないタキはやはり心底何かに怯えているようだ。
そんなタキからアタシは目をそらさずに言う。

「もちろん、聞くよ」

ぎゅっと表情が強張ったように見えたのは、告白することへの恐れか。
タキの気持ちは分からないけれど、葛藤しながらもアタシとの目に見えない物を繋ごうとしてくれているのが分かる。
だからアタシもそれを受け止める。
大丈夫だよ、タキ。

「さぁまずは、食事を片付けちまおう。店の支度もあるしね。今日は早く店を閉めて話を聞くのは落ち着いた夜にしよう」
「あぁ、そうだね」

今ではないことにホッとしたのだろうか、少し表情を緩ませている。
至極何も無かったかのように店の掃除をして、客を迎え入れ、給仕をし、その演奏に身を任せて踊り、客を送り出し、そして……その夜。
アタシは、タキの昔話を聞いた。