朝に立つキッチンは久々だ。
この家、この店の主人であるはずなのに、キッチンではジェイムズやタキが立っている時間が圧倒的に多い。
備蓄してある野菜を細かく刻み、ジェイムズが店用に作り置きしている鶏ガラスープを少し拝借。
少し煮込んで味を整えれば立派なスープだ。
黒糖のパンをスライスしてグリルに置いて火を入れる前に卵を茹でる。
半熟で上がるように茹でている間に、コーヒーを落とす。
コンロに火を入れて、その間に部屋へと戻りタキを起こした。
「タキ、さぁ起きな!朝だよ」
アタシの声に、タキは手を挙げて答え、むくりと起き上がった。
「朝食の準備はできてるからね、支度ができたら来ると良い」
タキにそう言い残してアタシは店へと戻った。
裏面にも火が通るようにパンを裏返し、ゆで卵を冷水に当てる。
スープをカップによそい、カトラリーの準備を進めたところでタキがやって来た。
「おはよう、カレンさん。昨日は……ごめん」
「おはようタキ。気にするなと言ったって、タキは気にするんだろう?」
手を動かしながら言うアタシの言葉にタキは苦笑する。
「アタシの気持ちは、昨夜も言ったけれどね。変わらないんだよ、タキ。一緒にいた時間に見えたものは、変わらない」
「……ありがとう、カレンさん」
それにアタシも苦笑で返して、朝食の準備を終える。