ギィ、ギィと風に看板が揺れていた。
今日は風が強く吹いている。
扉の札をOPENにするや店内は満席、なんてことは無いけれど徐々に店内は賑やかになっていく。
「いらっしゃい!あぁ、そっちの方が空いてるだろう。いつもので良いかい?」
「あぁ、頼むよ」
店の扉が音を立て、ひっきりなしに客を入れていく。
街が赤く染まり、夜の闇を纏い始めたころに仕事を終えた街のみんながやってくるのだ。
その頃に店は一気にざわめきを増して、アタシたち従業員はフル稼働だ。
ジェイムズが料理を作り、タキがドリンクを作り、ハンナにマリィ、それにアタシがそれらを配り回る。
「いらっしゃい、さっきサガイおじさんとマリエおばさんが来たよ。あっちの方にいるだろう」
「ありがとう、いつものを頼むよ」
「はいよ」
どうやらこの客の入が落ち着くまでは着替えに行くこと難しそうだ。
テーブルが埋まり、店内が少しばかり落ち着きを取り戻してきた頃にアタシは踊り子になるための準備をする。
だがこのところは有り難いことにテーブルが埋まって落ち着くまでに少々時間がかかるのだ。
料理の注文の合間に年始の踊りの話題を振られそれに応え、などとしていると以外にも時間が取られている。
「いらっしゃいませ!こちらの方も空いてますよ」
「ありがとう。あぁ、ワインを頼むよ」
「ありがとうございます!」
ハンナやマリィも忙しなく動いてくれている。
周りを見渡して、そろそろ大丈夫かと料理や酒の提供が落ち着く頃を見計らって着替えに行くことをジェイムズに伝えようとした頃にレイがやってきた。
「よぉカレン、今日もまた賑わってるな」
「あぁ、タキ様々さ。年始の演奏を聴いてどうやらファンが増えたようだ」
「ははっ、違いない。マリエさんもその口だろう?」
「そうそう、本当に評判がいい」
「お蔭で新しく来る客も多いのさ」
「良いことじゃないか」
「本当にね。だがこう忙しくちゃ猫の手も借りたいぐらいだよ。まずは酒と料理が先だろう?演奏も踊りも待たせちゃってね」
「違いない」
「嬉しい悲鳴ってやつだね。まぁレイも楽しんでいっておくれよ。いつもので良いかい?」
「あぁ、よろしく」
アタシはジェイムズにレイの注文を通すと、そのまま着替えに行くことを告げた。
その様子を受けてタキも準備に入るところだ。
店はまだ賑わっている。