サガイおじさんとマリエおばさんの寄り添う姿は恋人のようにも見えるが、その落ち着きようにはやはり苦労を共にしてきた長い年月もしっかりと窺える。
子供がいたら、なんて話をサガイおじさんはたまにするが、それはマリエおばさんを責めるでもなく自分を責めるでもなく、そんな未来があったらなという若い頃に持った希望の一つ。
夫婦二人でたくさん悩んだこともあっただろうがそれを受け入れ、羨むことはあっても僻むことなく事実を受け入れ二人で仲睦まじく過ごしている。
小さな頃からアタシを見ていてくれていたこともあって、本当の子供のように接してくれているしタキに対しても同じく我が子のように思ってくれていることが分かる。
先程の会話に自然と頬が緩んでいた。
「やぁ、いらっしゃい!カレン、タキ」
「あぁ、ライク。今日はまたいい天気になったね」
「おかげさまで客足も上々だよ」
買い出し用のメモを確認してあれやこれやと必要なものを頼んでいると、横からタキにひょいと声をかけられる。
「カレンさん、ジャガイモも少なくなってなかった?」
「あぁそうだったね。ジャガイモもお願いするよ」
「はいよ、まいどあり!」
ライクが手際よく頼んだ品を包んでくれる。
手を動かしながらも「最近は子供たちが……」なんて、ひっきりなしに口が動く。
アタシ達はその様子を相槌を打ちながら待っている。
最近は街の皆が「タキの演奏は素晴らしいね」と話しかけるもんだから、以前のように屈託のない笑顔を見せる機会がめっきり減り、照れている姿ばかりを目にしていた。
その様子にそれはそれで皆一様に「普段のタキや、あの演奏をしているタキとは別人のようだね」と笑うのだけれど、タキとしてはやはり落ち着かない、というのが正直なところなのだろう。
その点ライクは世間話を「な、そうだろ?タキ」と、うまい具合にタキにも話を振るもんだから、この店にいるタキは随分と口数が多くなる。
ライクはよく店にも来るし、とりわけタキが話をしている相手でもあるから、演奏が良いのはもちろん知っているがそれを褒められることに恐縮するタキの性格をよく知っているのだろう。
品物を受け取ってもしばらく世間話をして楽しい時間を過ごす。
この店で話しているタキは、やはり自然だ。
そんなタキを見るのが嬉しかった。