夜が明けたクリスマスの朝。
窓の外を見ると、例にもれず、雪が降っている。
「サンタクロースも大変だな」
「そりが滑っていいことだろう」
くすくすとタキが笑った。
朝食を囲んでいるが、いつものように子供たちのはしゃぎ声がの少ない。
きっと“サンタクロース”がくれたプレゼントを開けて家の中でいつもに負けない声ではしゃいでいるに違いない。
クリスマスは、家族で過ごす穏やかな日ではあるが、アタシはいつもこの日が寂しかった。
家族と仲良く過ごす日、つまり、家族のいないアタシには少しばかりの疎外感を感じざるを得なかったのだ。
家族を亡くした時にはもう15を越えていたのに、幼い子供のようにこの疎外感は訪れる。
平日と大差のない日常を、夜に向けて楽しむ声が聞こえる市、いつもよりもっと静かな夜の街。
あれから更に大人になっても寂しさは消えない。
どんなに家族のように仲が良くても、家族ではない。
「一人が寂しいのなら、店を開けておけばいいのに」
何かを察したようにタキは言うけれど、アタシはそれを聞こえないふりでやり過ごした。
コトリ、と差し出されたカップから甘い香りが立ち昇る。
いつものコーヒーではなく、どうやらホットチョコレートのようだ。
「優しいね、カレンさんは」
「……優しい、わけでもないさ。店を開けたって、たかが知れてるしね」
「そう言うことにしといてあげる」と笑って、タキは自分の分のコーヒーを飲んだ。
それに今日は一人じゃない。
タキがいる。
家族ではないけれど、共に過ごす人がいる。
昨日感じたときと同じだ。
寂しさは消えない。
けれど、共存する暖かさがある。
テーブルに並ぶカップはまるで家族か恋人のように寄り添って、仲が良さそうだ。
「甘い。……美味しいね、ありがとう」
呟くと、タキはそっとアタシの横に腰掛けて、くしゃくしゃと頭を撫でた。