会計のラッシュが終わり、店内に残ったのは客は四人。
それも一つのグループで時間的にももうすぐに帰ることだろう。

「ハンナ、マリィにジェイムズも!ご苦労さんだったね、ありがとう。もう今日は大丈夫だろう。上がっていいよ」
「ありがとうございます」

みんなに一声かけると、ペコリと会釈が返ってくる。
隣にいたハンナは笑顔で応えてくれた。
アタシはカウンターの隅に置いておいた小さな箱を三つ取り、三人に手渡す。

「さ、これを。メリークリスマス、良い年を」
「わぁ!ありがとうございます。メリークリスマス、カレンさんも良い年を」
「ありがとう、カレンさん」
「俺たちも何か用意しておけばよかったなって、毎年言ってる気がする」

箱の中身は大したことはない、小さなお菓子だ。
ラッピングなんて言うほど大層なものでもないが、小さなリボンが付いている。

「お返しなんてされたら困っちまうくらいの物だからね。いつも白薔薇を手伝ってくれてありがとうの気持ちだから受け取っておくれ」

そう言うと、三人は笑顔で受け取ってタキにも声をかけて帰って行った。
タキは挨拶を交わした後、黙々と下げられた食器やグラスを洗っている。
本当によく働くものだ。

「よう、カレン。長々と邪魔したな」
「良いんだよ、ルドルフおじさん。今年もありがとう」
「おうよ、来年も宜しくな!良いクリスマスを」
「ルドルフも」

そうこうしている間に最後の客も帰って行った。
今年最後の営業で、感謝の気持を持って看板をCloseに直す。
ろうそくの揺らめく店内には、アタシとタキが二人だけだ。
随分と洗い物を進めていてくれたおかげで、片付けはすぐに済みそうだ。
最後の気合を入れて、片付けを終わらせた。

「御苦労さんだったね」

すっかり片付いた店内で、カウンターに並び温かいお茶を淹れて一息。
すると、拗ねるようにちっとも怖くなんかない顔でアタシを睨む。

「カレンさん、笑っていただろう」
「相変わらず、人から拍手をもらうのは苦手のようだね」

タキは何も言わずに頭を掻いた。
アタシ達は、しばらく無言でお茶を飲む。
今年一年を振り返ると、タキと居た時間はとても短い。
けれどその存在の大きさたるや、人との関わりには時間だけではなく密度というのが大きく影響されるということを思い知る。

「さぁ、大きな掃除は明日っからにして、あたしたちも今日は終わろう」
「そうだね」

お茶を飲み終わり、ぐん、と伸びをして立ち上がる。
そして、目の端に写った箱に手を伸ばす。

「タキ、これを。メリークリスマス」

アタシが手渡すと、小さな子供のように顔をほころばせた。

「俺にもくれるのか?ありがとう。……俺、なにも用意してなかったな」
「そんなの、気にするもんじゃない。いつも色々やってもらってるんだ。その感謝の気持ちだよ」
「じゃあ、遠慮なく」

その反応に満足して、ゆっくり頷いた。

「さぁさぁ、今度こそ寝ることにしよう。明日は少しゆっくりして、明後日からは大掃除だ」
「了解」