レイを見送って、店の喧騒の中へと再び戻ると、まだまだ飲み足りない輩たちが、そこかしこでタキにギターを乞うている。
タキはもう、すっかりこの街に馴染んでいる。
「タキ、せっかくのクリスマスだ。1曲プレゼントしてあげな!」
アタシがそう声をかけると、笑顔で受けて、ギターをとり演奏スペースへと足を進めていく。
客達からは拍手や指笛が鳴る。
タキは考えるようにひとつポロン、音を鳴らせてから軽快な演奏が始まった。
穏やかな曲ではなく、賑やかな曲で、すぐに手拍子が盛り上げる。
アタシはその音を聴きながらカウンターの中に入り、客からの注文を作っていくことにした。
「カレンさん、お疲れ様。良かったらこれ」
「あぁ、ありがとう。踊った後だからね、喉が渇いていたんだ」
ジェイムズに差し出されたドリンクを口に含むと爽やかなベリーの味が炭酸で弾ける。
レモンがアクセントになっていて甘過ぎないそれは乾いた喉を潤していく。
「これ、美味しいね」
アタシが言うと、ジェイムズは少しだけ照れたように笑った。
「まだこのリキュールはあるのかい?」
「ありますよ。……クリスマスですから、赤い色がいいなと思って沢山仕入れといたので」
「流石だ!ミントかローズマリーを飾ったらまさにクリスマスカラーだね。皆にも配ろう。この一杯はアタシからのクリスマスプレゼントだ」
「タキにばっかりいいとこ取られちゃかなわないからね」とウィンクすると、ジェイムズはクスリと笑った。
店内に響くのは、タキの演奏するギターと歌声、客達の手拍子、そしてアタシ達従業員の少しばかりの雑音。
気心がしれている仲間たちとのクリスマスの前の日の、心地のいい時間だ。
ジェイムズと二人、ドリンクを量産して出来上がったものをカウンターに並べていると、ハンナとマリィがやってきた。
「本当に素敵な演奏ですね。ところでこれ、こんなにたくさんどうするんです?」
「アタシからのクリスマスプレゼントだよ」
「なるほど。じゃあ皆さんに配ってきますね!」
「あぁ、頼んだよ」