「カレン!これを」

踊り終えたアタシに拍手と共に差し出された小さな箱。
渡し主はレイだ。
少しばかり早いクリスマスプレゼントをくれたのだろうと思い至る。
見れば他にもプレゼントらしき箱をやり取りしている姿が見える。
店内の喧騒は、おそらくここ数日の中では今日が一番だろう。
クリスマスを明日に控えた今日は穏やかな雪。
吹雪いていたらなかなか出歩くことができない為、この天気はありがたいものだ。
なんせクリスマス当日は家族と過ごすのがこの地方の習わしで、友人たちや親しい人たちとお祝いをするのはクリスマス・イブの今日。
その為、日中のマーケットもよく賑わっていたし、白薔薇もおかげさまで盛況だ。

レイから受け取った箱を開けると、そこには可愛らしい木彫りの人形だ。
ギターを持っている。

「これはタキだね?」
「正解だ!」

プレゼントは毎年、レイが手作りでオーナメントを作ってくれるのだ。
いつからだったか記憶に鮮明さはないけれど、幼い頃に今よりずっと若いレイが作ったオーナメントに目を輝かせてからずっと今日まで続いている。
歳を重ねる毎に上手くなっていっている。
派手さはないが、さすがに手先が器用で綺麗な細工が施されている。

「毎年ありがとう、レイ」

笑顔で礼を言うと、カウンターへ向かい、そっとピラミッドに並べる。
並んだそれに満足な顔をしてレイは帰って行った。
今日は早々に帰宅して子供たちにプレゼントの準備をしてあげるのだろう。
大柄なレイがこっそりと子供部屋に入りプレゼントを準備するその様子を想い浮かべて、笑みが落ちる。
この街の住人たちは皆、家族のようなものだ。
誰もがアタシの事も、両親、祖父母に至るまで知っている。
けれども、全てを知っているからこそ胸に疼くものもある。
毎年クリスマスには家族を想って、羨ましさや切なさも感じていたのを誤魔化していたけれど、今日はいつもと違う。
羨ましさや切なさは今もある。
けれど同時に、優しさも胸に灯るようで温かい。