吹雪いてはいないけれど、しずしずと雪の降る日のこと。
暖炉の暖かさと、食後のコーヒーで体を温めていると窓の外からはしゃぎ声が聞こえてきた。
「僕がいちばーん!」
「まってよー」
「きゃーっ!」
隣に住むレイの家の子供たちだろう。
こんな時間に元気な声が聞こえるなんて、学校はすでに冬休みに入ったようだ。
雪を投げては逃げ、雪だるまを作ったり、そり滑りをしたり。
毎年同じように雪は降るのに、子供たちの遊びも昔から変わり映えがしない。
街中では、そろそろ年末年始の準備があふれるころだ。
ドアに飾られたリースに、ヤドリギ。
華やぐ街に心なしか浮足立つのは何も子供たちだけではない。
深い緑と鮮やかな赤いリボンに少しばかりの金色がアクセントになり、すっかりクリスマスをお祝いしている。
職人たちの技巧が光るオーナメントはこの時季だけに広場にできるマーケットで所狭しと並んでいる。
ガラス細工に木工、小さなものも大きなものも。
ろうそくの気流でクルクルと回るクリスマスピラミッドも大小様々ある。
夏場には劣るが、冬にも人の出入りがあるこの港町では、対外向けにもこういった飾りを扱っているのは有名で、雪の深い時節柄だと言うにも関わらずマーケットは連日賑わいを見せているようだった。
そんな街中同様に、この店がいつもと様子を違えることがあるとするならば、壁に飾られたヤドリギと、大人の背丈を少し超えるくらいのモミの木が一本、そして卓上サイズのクリスマスピラミッドがカウンター横に飾られていることだろう。
モミの木にもピラミッドにも派手な飾りはないけれど、いくつものオーナメントが飾られていてクリスマスを歓迎している。
「この飾りは初めて見たな」
「そうかい?ここいらは雪がよく降るだろう。どうしたって大工仕事や流通というのが滞りがちになっちまうからね。職人たちの冬の間の手慰みさ」
「なるほど。腕のいい職人達がたくさんいるし見ごたえがありそうだ」
「このクリスマスピラミッドはね、ろうそくを灯してやるとその熱で上についている扇が回転するんだ。その動力を使って台が動くんだよ」
「なるほどね。それは楽しみだ」
「夜になったら忙しくてなかなか見れないだろう。ちょっと待っておいで」
物珍しそうに飾りを見つめるタキに、嬉しくなってアタシは早速ろうそくに灯りを灯す。
ゆらゆらと揺れる火が少しばかり暖かく感じさせる。
やがてゆっくりと扇が回転し、続いて台座が回りだした。
「へぇ!かわいいな」
「そうだろう?」
得意げに答えてアタシはコーヒーカップを片付けた。