殆ど一方的であったマシンガントークに途切れが生じる。みるみる内に、絵茉の顔が赤く染まった。
これは誰にも脈がなさそうだ。
「違っ、いや違わない! 人としては好きだけど、恋愛的な意味で好きとかそんなんじゃ……!」
「でも古文って基本的には文法の暗記だし、わざわざ教えてもらいに行っていたってことは、それは好意があったからで……」
嫌いな先生には聞きたくても聞けないものだ。教えて貰いたい教科があっても、苦手な先生に話しかけることは極力避けたい時環であり、相手も自分には話しかけられたくないのではないか、そう考えてしまう。
質問の必要が殆どない科目であれば、好意や嫌悪の感情にかかわらず自己解決。その方が相手の時間も奪わないで済むため、行動に走るのは完璧を志す秀才か、その教員とのコミュニケーションを楽しむ者。時環による根拠のない想像だ。
「違うの。昔は国語が苦手だったから国語の先生に嫌われていて、ちょっと嫌がらせとかされて。先生はそれに気付いてくれて、同情と親切で勉強に付き合ってくれただけ。教育実習生だったし、そもそも家庭科を担当されていたから、向こうから来てくれなければとてもじゃないけど教えてくださいなんて言えない。私はただ、甘えていただけ」
相手は国語の先生だと勝手な先入観により時環は思い浮かべていたが、そこはさほど重要ではない。だが、教師は自分の担当外の科目を教えることを極力避けたがるイメージだ。
珍しい教師もいるものだなと感心し、そんな存在が自分の近くにもいることを直ぐに思い出す。幸哉は理数科目と文系科目、どちらの勉強にも付き合ってくれた。改めて考えるとフルスペック教師だ。