神様と私の秘密の7日間

体育館に入ると、熱風が体を包んでいく。

「暑い……」

伴奏者の私は、列から外れて指定された場所へ向かう。

校長先生と教頭先生、指揮者、伴奏者の4つのパイプ椅子があるはずなのに今日は5つ。

「今日もよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

毎回気まずそうに挨拶する先輩ももう慣れた。

「櫻木、ちょっといいか?」

田所先生の声がした方へ振り向くと、先生の隣に見覚えのある子がいた。

「転入生の高橋大和くん。同じクラスだから仲良くしろよ」

「初めまして……じゃないですね、晴空ちゃん」

笑顔が素敵なイケメンな男の人は、昨日私を宗教勧誘してきた子。

「知り合いか?」

「いえ、昨日少し話しただけです」

「知り合いがいるなら心強いな」

私の隣にすわると、「よろしくね!」と言われたので、「こちらこそ」と返した。

昨日みたいに出会ってすぐに宗教勧誘をすることなく、大人しく座っている彼。

「これから、2学期始業式を始めます」

教頭先生の言葉から始まり、校長先生の長いお話の後、校歌の伴奏。

生徒指導主任の先生の毎回同じ内容の話に、どうでもいい諸連絡。

予定より10分延長された始業式は生徒達にはただただ無駄な時間だった。

生徒が次々と体育館を後にする中、私はピアノの片付け。
いつもは体育館のステージの端に置いてあるピアノは、使う時だけ移動させる。

そういえば、さっきの転入生の子の名前なんだっけな?

「櫻木さ〜ん! ピアノ移動させるの手伝うよ!」

生徒会の数人がそう言いながらピアノの移動を手伝ってくれた。

さすがにグランドピアノを1人では移動できない。

「そういえば、晴空ちゃんのクラスに転入生くるんでしょ?」

「さすが会長。」

「そりゃあ、生徒会長だもん!」

「でも高1の2学期から転入なんて珍しいよね?」

「そうだね。まあ、なにか事情があるからだと思うよ?」

この学校の生徒会長の水原彩乃は近所のお友達。
小学校の通学班は毎年一緒だったし、中学でも時間が会えば一緒に帰るほどの仲の良さ。

「彩乃ちゃんは、宗教勧誘されたらどうする?」

「どうしたの急に」

少し困った様子で笑う彩乃ちゃん。

やっぱり困るよね。
私だってあの日にあの人に合わなければこんな事をいつまでも心の中に留めとかないし。

「私だったら断るかな?」

「だよね! 私だけじゃなくてよかった〜」

「晴空ちゃん勧誘されたの?」

「まあ……ね」

「近くに教会なんてあったっけ?」

よく良く考えればそうだ。

私の住んでいる所には教会なんてない。
15年生きているけれど、勧誘されたことも無い。

「やっぱり暑さで可笑しくなっただけか」

「なに? その話気になるんだけど」

さっきまで私の質問で困っていた様子の彩乃ちゃんは、興味深々の彩乃ちゃんに変わっていた。

「秘密! また今度ね!」

手を振り、彩乃ちゃんと別れた。