将来の夢についての作文。

小学生だったらきっとすぐに書き終えてしまうのだろう。

あの頃の私は、本気で魔法使いになれると思っていた。

広い空を飛んでみたり、魔法を使ってみんなを笑顔にしたり……

いつからだろうか? その夢が壊れる音がしたのは。

小学6年生の卒業文集で書いた将来の夢。
みんなは保育士や学校の先生、有名人になるなど、魔法使いより現実味があった。

その時書いたことは、はっきりとは覚えてない。
【夢は決まってないけれど、人を笑顔にしたい】
そう書いた気がした。

大きくなると共に、社会を学ぶと共に、晴空という私を心の中に閉まっている。

心から笑っていたあの頃が懐かしい。
何も知らない、何も考えなくていい、感情のままに生きていたあの頃が羨ましい。

「何書こう……?」

作文用紙には名前しか書いていない。

大きく将来の夢は未定と書くか?
それともこのまま提出するか?

出さない気だったけれど、提出物を出さないと成績が悪くなるし……

この作文通りの職業にならなくてもいい。
今思う、夢を書けばいい
それは分かっているけれど、実際には書けない。

「お姉ちゃんただいま!」

「おかえり、海美」

私と妹は1つの部屋をカーテンで仕切っている。

お互いが部屋にいて、エアコンを使用している時はカーテンを開けることにしている。

「お姉ちゃん、まだ宿題終わってないの?」

「そう言う海美は? 日記とかどうなの?」

「大丈夫!」

今年から中学生になった海美は去年と違い、宿題をしっかり終わらせているみたい。
姉の私が終わってないのは、みっともない。

「そんな怖い顔してどうしたの?」

「なんでもないから大丈夫だよ」

「そんなにやりたくなかったら、やらなくてもいいんじゃない?」

「そうだね」

作文用紙をくちゃくちゃにしてゴミ箱に捨てたかったけれど、流石にそれはヤバいと思って半分に折りファイルにしまった。