「あの、ちょっといいですか?」

「はい、どうしました?」

高校1年生夏休み最終日。
どうしても先週発売されたコンビにの新作スイーツが食べたくて、暑い中コンビニまで歩いている途中に高身長の男の人に声をかけられた。

「あなたは、神様を信じますか?」

突然の事で何がなんだか分からなかったが、一つだけ分かることがある。

この人は私の事を勧誘している、と。

「あの、私神様とかあまり詳しくないし、ちょっと急いでいるので」

関わったらきっと、最後は教会に連れて行かれる。
そう思って数百メートルで着くコンビニまで走った。


「いらっしゃいませー」

ダルそうにレジに立っているバイトくんの挨拶と共に、私の体を冷たいエアコンの冷気が包んでく。

軽く会釈をしながら、お目当ての新作スイーツのコーナーへ。

秋はさつまいもや、栗のスイーツがたくさんで迷ってしまう。
特にモンブランは私の好きなスイーツベスト5に入っている。

安納芋クリームのシュークリームにするかモンブランにするか……

どちらも買うのが1番の解決策だけれど、一度に2つのスイーツはさすがに太ってしまうと乙女の私は思う。

やっぱりここは、モンブランかな?

モンブランを手に取り、家に帰っても麦茶しかないので無糖の紅茶のペットボトルも一緒に買う。

「あの、急ですみません。神様を信じますか?」

聞き覚えのある若い男性の声。

振り返ると、さっき道で出会った男の人がいた。

「なんですか? 私は神様なんて知りません」

会計を済ませて、早く家に帰ろう。
帰って早くモンブランを食べよう。

早歩きでレジに向かおうと歩き始めたら、服の袖をつかまれた。

「お願いです。人助けだと思って、(わたくし)にお水を……お水をくれませんか?」

「水ですか? まあ、いいですよ」

もしかしたらこの人は暑さでちょっと可笑しくなって、宗教の勧誘のような事を言ってきたのかな?
きっとそう。

「ありがとうございます。あなたは命の恩人です」

何度も深々とお辞儀をする男の人に、私は悪いことをしたのではないかと感じてしまう。

「ありがとうございました〜」

自動ドアが開くと一気に地獄の時間の始まり。

「はい、これ」

買ったペットボトルの水を渡す。

「本当にありがとうございました。ここの世界に来るのも久しぶりでお財布を忘れてしまって」

そう言いながら勢いよく水を飲む男の人。

「じゃあ私は帰ります。この暑さだし、熱中症とかに気をつけてください」

そう言うとペットボトルを口から離し、

「最後にお名前を聞いても?」

と聞いてきた。

知らない人に名前を教えちゃダメと小さい頃から親に言われているけれど、断っても名前を聞くまで帰してくれないのかな?