「起きているか??」
コンコンとドアがノックされ、すぐにドアが開いた。声からして昨日の青年だろうと、私は警戒する。
治療もしてくれてるし、柔らかな布団に眠らせてくれている人が果たして悪い人間なのか。
いや、惑わされては駄目だ。
昨日の記憶が鮮明にフラッシュバックして身震いする体を抱えるように、両腕で自分を抱きしめた。
「起きているようだな。腹が減ってるんじゃないか??消化の良い物を用意した」
ドアをあけ入ってきた青年は、目が合うとふわりと微笑む。手に持っていたお盆からは、ゆらりと湯気が昇り美味しそうな匂いもしてきた。
美味しそうな料理だが、それよりも驚きで私は目を見張っていた。
恐ろしいほどに整った顔をした彼は、頭の上に耳、お尻に尻尾を携えていたのだ。
なにあれ??おもちゃ??え??と開いた口がふさがらない。しかし、お腹はそんな事関係ないと空腹を知らせるアラームを鳴らした。
ぐぅぅぅっと大きめなお腹の音に、慌てて手を押し当てた。これで止まるわけではない、意味のない事とはわかっているが反射的にやってしまう。
恥ずかしさで顔が暑い、今なら顔でお茶を沸かせる気がする。
「お腹は減っているようだな。さぁ、冷めない内に」
机にお盆を乗せる彼、それでも私は棒立ちのままで一歩も動かない。
お腹の音が恥ずかしくてフリーズしているのもあるが、多少なり抵抗があるのだ。この人は信用して良い人なのか??何か裏があるのでは??とついつい勘ぐってしまう。
それが彼に伝わったのか、スプーンを掴んで料理を口に入れて見せた。
「怪しいものは入ってない」
おずおずと椅子に座り、手を合わせてから机の上に乗っている料理を口に入れた。その瞬間、優しい味が疲れた体にしみた。
「美味しい」
「そうか、初めて作ったんだが口にあってよかった」
食べ終える頃には、気持ちもだいぶ落ち着いていて全てありがたく完食した。