一本道を全力で駆け抜ける。それほど体力があるわけでもないのに、息絶え絶えにそれでも走り続けていた。

本当ならとっくの昔に、力尽きて走れなくなっている。それでも走り続けれているのは、きっと命の危機を体が理解しているからなんだろう。

もっと早く、もっと森の奥まで!!

全身が汗でびっしょりだった、服が肌に張り付く感じがして気持ちが悪い。

「も、むり、かも」

一番最初にいた場所を超え、少し走った場所でついに足が止まってしまった。

ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返しながら、近くの大きな木にもたれかかった。立つ事も次第に辛くなり、その場に座り込む。

一体何故、私はこんな目にあっているのか。

思い出したかのように急に喉がカラカラになって、鞄から水筒を取り出した。

情報が少ない。それでも、自分が置かれている状況が良くない事をわかる。誰に聞けば良いのか、誰が教えてくれるのか。

「誰に聞けばいいんだ。帰り方」

家に帰りたいだけなんだけどな……。

知らない場所で目が覚めて、魔法とか言われて、使えないからって売られそうになって。不花って何??なんで使えないからって、そんな目に合わせられる人がいるの??同じ人間なのに。

そんな不満を言ったところで、どうにもならない。わかってはいるが不満があふれてくる。

私は、木に体重を預け目を閉じた。逃げなければと思う自分と逃げる??何処へ??と自嘲する自分がいる。

どっちも間違ってないんだよなぁ。はははと乾いた笑いがこみ上げてきた。

指一本も動かす事がけだるく感じてくる。そんなときだった、ガサガサと近くの草むらが不自然に揺れ始めたのだ。

まさか!?もう追いつかれたの!?

ガサガサと動く草むらから目が離せないでいた。

それでもやすやすと捕まりたくはない。これが最後の足掻きだと体に鞭を打って地面を這った。

それでも草むらの動きの方が早い、段々と距離が近くなる事に恐怖した。嫌だ嫌だと必死に這うが、ついに草むらから人が出てきた。

「やっと見つけた」

青年と思われる低い声が聞こえ、ザリッと土を踏む音がする。

あぁ、終わった。

私の体はいち早く逃げるのを諦めたのか、力が抜け始めた。