細心の注意を払って、客間に戻り置いてあった鞄を手にした。

何処から逃げよう。

辺りをうかがい大きな窓に目が止まった。幸い客間は一階、窓から逃げ出せれる。

「よし!!」

窓を開け鞄を先に外に出すと、窓枠に足をかけ勢いよく外へと飛び出した。

少し着地に失敗したが、脱出は簡単に成功。

ホッと胸をなでおろすが、この後何処へ行こうかと次の問題が発生した。

このままここに居ても、つかまって最悪売られてしまう。

人身売買なんて完全に犯罪だけど、それがここでは普通なんだ。

何処に逃げなきゃ……。

――ガチャ

ドアが開く音に咄嗟にしゃがむ、それと同時にお婆さんの悲鳴に似た叫び声が聞こえた。

「――あんたッ!!ちょっと来ておくれ!!あの娘が逃げ出しちまった!!!!」

やばいもうバレた。

もう少し時間がかかると思ったが。

すぐにこの場から去るべきだったと舌打ちしたい気分になった。

今もなお、二人はあーだこーだと言い合いをしている。好機だと静かに家から距離をとるように逃げ出した。

走っているうちに、ついに涙があふれ始めた。

逃げ出したって行く場所なんてない、ここは何処だ、私はただ帰りたいだけなのに。

来た道を戻り、森を目指した。人気のない場所までとりあえず逃げなければと考えたからだ。

背後からは、老夫婦の叫び声が聞こえる。

「不花が逃げ出した!!捕まえてくれ!」

止まっては駄目だと本能がそういっている。

何かに躓いて、何度もこけた。膝には擦り傷が出来てジワリと血が滲んでいる。

二人の叫び声と逃げるように走る私を見て、誰かが魔法で走るのを妨害してきたのか、ただたんに足がもつれたのか。もうわけが分からない。

それでも必死に逃げ続けるしかなかった。

全力で走り続け、命からがらなんとか自分が出てきた森の中につながる道まで走りきった。

背後からはまだ老夫婦が追いかけて来ている。

同じ人間なのに、化け物にでも追いかけられている気分だ。

悩む事もなくその道へと足を踏み入れ、自分が苦労して出てきた道を逆走した。