二人の後を追い、案内されついた場所は二階建ての一軒家だった。

「あんまり大きくて綺麗な家じゃないけど、あがって」

お婆さんは玄関のドアを開け、笑顔で振り返った。

「お邪魔します」

頭を下げて、家に入ろうとしたとき不意に背中を何かに押され躓いた。なんとか転ぶ事はなかったが、驚きでバッと振り返る。しかし、背後には誰もいない。

何かに押されたような気がしたんだけどなぁと不思議に思って首をかしげた。

「さぁ、こっちよ」

家の中に入れてもらい、一室に通された。落ち着いた色合いの家具で統一された部屋。どうやら客間のようだ。

「夕食を作るからここで待っていて」

そう二人は言って部屋から出て行った。

少しの間椅子に腰掛けていたが、そわそわしてしまう。

次第に罪悪感が芽生え始めた。家に泊めさせてもらうのに、料理まで。それなのに私ここで座ってても良いのかな。

色々悩んだ結果せめて料理を手伝わせてもらおうとキッチンへと向かう事にした。

上手く手伝えるか分からないけど、邪魔じゃなければ手伝わせてもらおう。

他所様の家でどたどた歩くのは失礼だと、あまり物音を立てずキッチンを目指した。

客間を出て静かに歩く、不意にお爺さんとお婆さんの話し声が聞こえてきた。

とっさに歩みを止めてしまう、どうやら私の存在にはまだ気がついてないようだ。

「どうするんだ、あいつ。連れ帰ったりなんてして」

ため息混じりにそう言ったのはお爺さんの方だった。リズムよく包丁の音が聞こえていたが、それがやむ。

「どうするも何も、売るに決まってんだろ。ありゃあ不花だ、記憶がないなんて嘘さ。大方何処かから逃げてきたんだよ」

「……何だ売る気だったのか」

「今日は丁度不花売りが来てるようだしね。若いそれも女なら、少しは金になるだろう??家に入るとき魔法で背を押したが気付いちゃいなかった、あれは間違いなく不花だよ。最初から怪しいと思ってたんだ」

――え??

優しい老夫婦の姿がバラバラに砕けていった。キッチンからは愉快そうな二人の笑い声が聞こえる。

売る気でいたのか、最初から。玄関で何かに押されたような気がしたアレが魔法か、どういう原理のどんな魔法か知らないけど、そうかお婆さんに背を押されたのね。

すぐに人を信用した私にも落ち度もある。それでも悲しさで涙が出そうになった。

いや、泣いてたまるか。

ここから逃げよう。

少し目にたまった涙を拭いて、力強く口を結んだ。

玄関に向かうためにはキッチンの前を通らないといけない、でもキッチンはドアがないから通ればばれる可能性が高い。

私は音を立てないように慎重に、先ほどの客室へと戻った。