大ピンチ過ぎて言葉が出てこない。
目の前には、かろうじて道がある。長く使われていなかったのか、お世辞にも歩きやすそうな道とは言えないが。
「どっちかに進むべきなんだろうけど」
長くのびる一本道は、どちらも歩いた先がどうなっているのか確認できない。どちらかの道を進んだら町に続くと仮定して、確立は二分の一だ。
最悪なケースはどれだけ進んでも町は見つからず、なんとかある水筒の飲み物や唯一の食料のお菓子も尽きて事切れてしまう。
もしくは、熊などの大きな動物に襲われる。
仕事終わりの今、少し休んだから多少は違うけど体力がもたない事もありえる。さてどうしたものか。
「っていっても、進まないと始まらないよね」
とほほと眉を垂らしながら、勘で決めた道を歩き始めた。その瞬間だった
≪逆だよ逆~。そっちに歩いても町には着かないよ≫
何処からともなく子供の声が聞こえた。幼い少女とも少年ともとれる、鈴のような綺麗な声だ。
いきなり聞こえた声に、私はびくりと肩を揺らし辺りを見渡す。でも、何処を探しても人影は見つからず恐怖心が高まった。
「ど、どちら様ですか??」
鞄を胸に抱き、問いかける声は尻つぼみになっていった。
不審者!?いやお化け!?どっちにせよ怖い!!
≪僕の事は気にしないでおくれ、あってないようなものだからさ~。それより町に出たいならそっちじゃないよ逆方向。森の奥で君を歓迎してる方がいるから、僕としてそのまま進んで欲しいんだけど≫
「い、嫌です。私家に帰りたいですから、町に出ます」
そもそも歓迎って何!?歓迎される覚えないんだけど!?
≪あぁ、そう??なら君には向かないと思うけど、行きたいなら止めはしないよ。見てきたらいいと思う人間の世界を≫
「……えっと、その。ありがとう」
一応お礼を言うが、もう返事は返ってこなかった。
いったいなんなんだと不振がりながら、逆の道を進み始める。君には向かないとあの声は言った、それはどういう意味なのか、さっぱり分からない。
私はずっと人間の世界で生きてきたのに。
いや、そもそも人間の世界って言い方に引っ掛かりを覚える。
まるでそれ以外が存在するような言い方だ。
「人間以外にお会いした事ないけど、もしかして本当は居るのかな人間じゃない生命体」
宇宙人とか幽霊とか見た事ないものは信じていなかったが、あれがそれなのかな。
悶々と考えながら道をひたすらに歩き続け、やっと人の声が聞こえ始めた。
知らない人の言った事だったから半信半疑だったが、聞いてよかったとたっと駆け出した。これで帰れる!!ホッとして泣き出しそうな気分だった。