「さ、この話はこれで終わりだ。不花については理解できたか??」
話を打ち切るようにジンさんは手を叩いた。その音で我に返った私はこくりと頷いた。
先ほどの悲しそうな表情は完全に消え去り、次は何を話すべきかと彼は顎に手を当てている。
しばらく考え込んだ彼は、あぁと声を漏らした。
「そうだ、ヒナ、君も気になっているだろう元の世界へ帰れるか帰れないかの有無については、現時点では何ともいえない。すまない」
何も悪い事はしていないのに、ジンさんは申し訳なさそうに頭を下げる。
さすがに、悪いと思って私は慌てて首を振った。
「そんな頭を上げてください!!ジンさんは何も悪くないですから」
彼の所為でこんな事になったわけではないのに。申し訳なさそうに謝るジンさんの姿を見てこちらも申し訳ない気持ちになってしまう。
「俺も可能な限り、帰れる方法がないか探してみる」
「ありがとうございます」
一人ではないと言ってくれているような気がしたて、自然と笑みがこぼれた。
実際ジンさんの気持ちは分からないし、きっとそんな事を思って言ったわけではないと思う。
それでも、“帰れる方法がないか探してみる”たったその一言で心が軽くなるのを感じた。
≪おやおや、戻ってきたのかい??≫
何の前触れもなく、聞こえてきた声。何処からともなく室内に響くその声は、間違いなく昨日聞いたあの声だった。
私は、ビクリと肩を震わせ辺りを見渡す。
「この声、あの時の」
ぼりと呟けば、愉快そうにケタケタと笑う声が聞こえてくる。
≪そうかいそうかい、なら見てきたんだねあちら側を~。どうだった??怖かったかい??あいつらは恐ろしい存在だからね~≫
少しからからかうような口調のその声に、黙っていたジンさんはただ静かに一言だけ発した。
「……木霊か」
「木霊??」
≪ピ~ンポ~~ン!!だいせいか~~い≫
木霊と呼ばれたその子は、困惑する私をよそに嬉しそうな声を上げた。