何から聞こう。

私は、知ってる事より知らない事の方が多い。聞きたい事が多すぎて、何から聞けば良いのか迷う。

「あの、聞きたい事は多いんですが。何から聞いて良いのか」

素直に話すと、ジンさんはそれもそうかと顎に手を当てた。

「じゃあ、まずは不花について話そう。君も知りたいだろう」

老夫婦に少しだけ聞いた不花という存在。不花として売られそうになった身としては、その存在について知りたいという気持ちはあった。

「はい、お願いします」

私が頷くと、ジンさんは腕を組み神妙な面持ちで口を開いた。

「不花とは、魔法が使えない者の総称だ。不要な者、魔力が開花しなかった者、不要の不に開花の花で不花」

酷い意味だと率直に感じた。魔法が使えない=存在する意味が無いと言われているような言葉だ。

「不花には人権が無い。物の様に売り買いされ、死ぬまでこき使われる」

…なにそれ。

あまりにも非情で、一語一句言葉も沸いてこない。ぶるりと全身が震え上がった。

ドクリドクリと心臓が嫌な音を立て始める。

「それは、獣人の国でも??」

震えそうな声をなんとか押さえ込み聞くと、彼は首をゆっくり左右に振った。

「いや、こちらにはその制度は無い。むしろ、それが原因で人間と獣人は争ったんだ。こちらは不花の存在を認めない。獣人と一括りにしているが多種族が共存している国なんだ、中には魔法の一切が使えない種族もいる」

それでも、互いに不足した部分を補って生きている。それは人間だって出来るはずだと獣人たちは主張したが理解はしてもらえなかった。

そう付け加えるジンさんの表情は、悲しそうだった。